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No.18193 アール・ヌーボー エドワーディアン スターリングシルバー キングスパターン ジャムスプーン
長さ 15.4m、重さ 34g、ボール部分の最大幅 3.5cm、柄の最大幅 1.85cm、柄の最大厚み 2.5mm、1907年 チェスター、Walker & Hall 作、二万三千五百円

WALKER & HALL製のスターリングシルバー ジャムスプーンです。 百年以上前のエドワーディアン アンティーク シルバーですが、コンディション良好なところもよいでしょう。 アール・ヌーボーの植物デザインエングレービングも素晴らしいですが、素材は厚めで質感があり、すべてしっかり出来たところが好ましく、お薦めできるエドワーディアン シルバーウェアと思います。 

写真三番目で見えるように、裏面のホールマークは順に「Walker & Hall」のメーカーズマーク、1907年のデートレター、チェスター アセイオフィスのシティーマーク、そしてスターリングシルバーを示すライオンパサントです。

チェスターシルバーというのも希少価値があってポイントとなりましょう。 英国各地のアセイオフィスで検定を受けたスターリングシルバーのおそらく9割以上は、ロンドン、シェフィールド、バーミンガムのいずれかの品で、チェスターは数が少ないのです。 

チェスター アセイオフィスのシティーマークがくっきりと読み取れます。 チェスターのマークは「Three Wheat Sheaves(三つの麦束)」と呼ばれ、1686年から使われてきたものですが、1962年にチェスターアセイオフィスが閉鎖となったので、今はもうありません。

ウィート シーフ(麦束)とは、豊穣、生産力(Fecundity)、肥沃さ(Fertility)のシンボルで、英国ではラッキーモチーフとして好まれる縁起物です。 そもそも小麦はギリシャ神話に出てくる「農業、豊穣、結婚の女神デーメーテール」を象徴しています。 以前にミントン美術館で見た「ウィート シーフを抱えた少女の絵皿」にとても惹かれ、この少女の顔立ちはデーメーテールを意識したのかしらと、妙に気になったのを覚えていて、それ以来どうも私はこのウィート シーフというモチーフに惹かれるのです。

ミントンの絵皿とウィート シーフについて、「英国アンティーク情報」欄の「13. 英国陶器の街、ストーク オン トレント」の解説記事に写真がありますのでご参考まで。

この銀のスプーンを作ったシルバースミス「Walker & Hall」のメーカーズマークは、三角フラッグの中に「W&H」と書かれたマークで、とても特徴があるので、一度見ると忘れられないマークです。 印象的なのはメーカーズマークばかりではなく、この銀工房の歴史をたどってみると、歴史も長く、評価の高いシルバースミスであったことが分かります。

Walker & Hallは1845年にジョージ ウォーカーによって創業され、ヴィクトリアン、エドワーディアンの時代を通じて有望なメーカーに成長しました。第一次世界大戦を境に大英帝国の最盛期が過ぎると、多くのシルバースミスも衰退する運命をたどりましたが、ウォーカー&ホールは第二次大戦後までもずっと仕事を続け、その技術は高い評価を受けていたことから、1970年代に至ってマッピン&ウェッブに買収されました。

シルバースミスの歴史を調べてみると、アンティークへの親しみも湧きますし、古いものを通じて当時の社会のありようが分かってくることに興味を覚えます。

ハンドル部分のパターンはキングスパターンと呼ばれ、柄先のシェルデザインが重要なメルクマールとなります。 このモチーフは、もともとは12世紀にスペインの聖地 St.ジェイムス オブ コンポステラへ向かう巡礼者たちが、彼の紋章であったシェルを身につけて旅したことから、クリスチャンシンボルとして、シェルが取り入れられていったのが始まりです。 15世紀以降はセラミックスやシルバーの分野で、このシェルモチーフが繰り返し取り上げられて今日に至っています。

キングスパターンは今日でも作られ続けているデザインですが、その歴史を遡ってみると、このパターンがイギリスで最初に登場したのは19世紀初めのことになります。 英国アンティーク情報欄の 「4.イングリッシュ スプーン パターン」で解説しているハノーベリアン、オールドイングリッシュ、そしてフィドルパターンに続く主要なパターンとして登場したのがキングスパターンでした。

キングスパターンから派生したデザインにクイーンズパターンと呼ばれるものがあります。 派生パターンなので、あまり見かけるものではありませんが、お客様から照会がございましたので、キングスパターンとクイーンズパターンの違いについてご説明しておきましょう。 

写真一番目と二番目をご覧いただくと、柄先のシェルが表側は凹状で、裏側は凸状をしているのが分かります、これがキングスパターンのメルクマールになります。 そしてクイーンズパターンは表と裏ともに凸状シェルになります。 つまりキングスパターンは表裏が凹凸、クイーンズパターンの表裏は凸凸ということです。

アール・ヌーボー エドワーディアン スターリングシルバー キングスパターン ジャムスプーン




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