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No.16864 ウォーカー&ホール シルバープレート ナイフ with 剣を持つ手 クレスト(紋章)
長さ 21.3cm、重さ 60g、ブレードの最大幅 3.2cm、柄の最大幅 1.9cm、ヴィクトリアン時代の英国製、WALKER & HALL作、七千五百円

おそらく百年ほど前に作られた品でありますが、あまり使われた様子がなく、コンディションのよいアンティーク シルバー プレート ナイフです。

シルバープレートのアンティークになりますが、いろいろと見所があって、お薦めできるよい品と思います。 シルバープレートウェアについて詳しくは、アンティーク情報欄にあります 「10.エルキントン社のシルバープレート技術と明治新政府の岩倉使節団」の解説記事もご参考ください。

ブレード面に見えているのはアサガオのハンドエングレービングで、レベルの高い仕事振りであるのは、ウォーカー&ホールというシルバースミスの名前の良さと関連ありと見ています。

もともとはバターナイフとして作られた品です。 長さが 21.3センチで、重さが60グラムというと、バターナイフとしてはかなり大きなサイズでビックリしますが、こういう大きなテーブルウェアがヴィクトリア時代の主流でありました。 手にしてみると、圧倒的な存在感が迫ってきます。 アンティークの風格と言えるのではないかと思います。 本来の用途であるバターナイフとしてお使いいただけるのはもちろんですが、ゴージャスなアンティーク ナイフでありますので、デスク周りでペーパーナイフにするのもいいかなと思います。

写真二番目をご覧いただくと、柄の裏面には WALKER & HALLのメーカーズマークが並んでいます。 左端に見えるのが、三角フラッグに「W&H」のマークです。

このバターナイフを作ったシルバースミス「Walker & Hall」のメーカーズマークは、三角フラッグの中に「W&H」と書かれたマークで、とても特徴があるので、一度見ると忘れられないマークです。 印象的なのはメーカーズマークばかりではなく、この銀工房の歴史をたどってみると、歴史も長く、評価の高いシルバースミスであったことが分かります。

Walker & Hallは1845年にジョージ ウォーカーによって創業され、ヴィクトリアン、エドワーディアンの時代を通じて有望なメーカーに成長しました。第一次世界大戦を境に大英帝国の最盛期が過ぎると、多くのシルバースミスも衰退する運命をたどりましたが、ウォーカー&ホールは第二次大戦後までもずっと仕事を続け、その技術は高い評価を受けていたことから、1970年代に至ってマッピン&ウェッブに買収されました。

写真一番目にあるように、『剣を持つ手』の紋章がハンドエングレービングされているのも、この品の魅力と言えるでしょう。 リースに載った『剣を持つ手』は繊細な仕上がりなので、手元にルーペがあれば、アンティークを手にする楽しみが増えると思います。

紋章の基礎知識について、少しお話しましょう。 紋章はコート オブ アームズと言うのが一般には正式です。 クレストという言葉もありますが、クレストとは紋章の天辺にある飾りを言います。 紋章の各部分の名称として、例えば英国王室の紋章の両サイドにいるライオンとユニコーンの部分をサポーターと言い、中央の盾状部分をシールドまたはエスカッシャンと言います。 さらに細かく言うと、写真のバターナイフに刻まれた紋章では『剣を持つ手』の下方に棒状の飾りが見えますが、これはクレストの台座であって、リースと呼ばれます。

ただし、紋章のすべてを描いて使うのは、大掛かり過ぎるので、その一部をもって紋章とされることも多く、中紋章とか大紋章という言い方もあります。 しかし、その区別は厳密でないので、紋章の一部をもってコートオブ アームズという言い方をしても差し支えありません。

コート オブ アームズ(=紋章)を使っていた人々とは、どういう階層の人たちであったのか、考えてみました。

コート オブ アームズの体系化や研究は、イギリスにおいて九百年ほどの歴史を持っており、紋章学(Heraldry)は大学以上の高等教育で学ぶ歴史学の一分野となっています。 中世ヨーロッパにおいては、多くの国々に紋章を管理する国家機関がありました。 今ではなくなっているのが普通ですが、面白いことにイギリスでは紋章院がまだ活動を続けています。

今日のイギリスは品のよい国のように見られることが多いですが、歴史を紐解きますと、節操のないことで名高い時代も長くありました。 キャプテン・ドレークは世界を航海して略奪をきわめて、当時の国家予算に匹敵するほどの金銀財宝を奪って帰ってきたので、エリザベス一世から叙勲を受けました。 お金がすべてという傾向は、紋章院においてもあったようです。

紋章学や紋章院の働きについて書かれた本が、『HERALDRY IN ENGLAND』(Anthony Wagner著、Penguin Books、1946年刊)です。

この本によりますと、紋章院が認めてきたコートオブ アームズは四万あるとのこと。
一方で英国の王侯貴族にあたる家柄は千足らずとなっています。

この数字のバランスから分かることは、第一にコートオブ アームズは王侯貴族だけのものではないこと。 第二に、そうは言っても、代々伝わるコートオブ アームズがある家系は、英国の中でも数パーセントに過ぎず、その意味で日本における家紋とはだいぶ違っていること。

産業革命が進行して、新興富裕層が厚くなってきたのがヴィクトリア時代の初め頃になります。 当時の富裕層はコートオブ アームズを求めましたし、また求めれば手に入る性質のものであったようです。

ウォーカー&ホール シルバープレート ナイフ with 剣を持つ手 クレスト(紋章)



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