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No.16819 スターリングシルバー フォーク (イギリス最古のシルバーフォークとはこんなものでした。)
長さ 17.9cm、重さ 43g、最大横幅 1.2cm、厚み 2.5mm、1973年 シェフィールド、一万八千五百円

博物学的な興味をそそられ、歴史の勉強材料としても、大変に興味深い銀が入りましたのでご紹介しましょう。 

このスターリングシルバーのフォークは、1632年にイギリスで初めて作られた銀製フォークを忠実に模して作られた品です。 イギリス最古のシルバー フォークとはこういうものであったのです。 オリジナルのフォークは、ダービーシャーのベイクウェルにあるハドンホールという中世マナーハウスで、代々続いてきたラトランド家の所有でありました。 そしてオリジナルには、1632年のデートレターがロンドンアセイオフィスによって刻印されています。

現在ではロンドンのヴィクトリア&アルバート ミュージアム所蔵となっておりますので、ロンドンにいらっしゃった際には、博物館で同じ大きさで同じ重さのテーブルフォークを見ることが出来ます。

写真三番目でサイドの様子がご覧いただけますが、かなりの厚みを持った銀であることがお分かりいただけるでしょう。

直線的で厚みがあって重たいことから、手にした感じは銀の延べ棒のようですが、先端の二手に分かれたタインの様子から、これが四百年ほど前のフォークのデザインだったのだなと思えます。 簡単な構造のフォークですが、それでもスターリングシルバーであることだけで、当時としては十分に富を象徴する財産であったと考えられるのです。

アール・デコとも、あるいは21世紀のデザインとも感じられるのですが、約四百年前にこのデザインが採用されたのは、ただ技術的に作るのが簡単だったからでしょう。 歴史は繰り返すとか、デザインの本質とは何か、等々についても考えさせられる品物です。

写真のフォークに刻印されているホールマークは順にメーカーズマーク、シェフィールド アセイオフィスの王冠マーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、そして1973年のデートレターになります。

長さやフォルムから現代人が見ますと、ピクルフォークのように感じられますし、今日ではそういった使い方でかまわないとも思いますが、もともとの用途としてはフォーク一般と言いましょうか、テーブルフォークになります。

イギリスのテーブルマナーの変遷を調べますと、17世紀頃まで、例えばディナーに招待されたとしても、スプーンやフォークは各自が家から自分用を持参するものでした。 英国の食卓において、スプーン、フォーク、ナイフ等のテーブル セッティング マナーが始まったのはそれほど古い昔ではなく、17世紀の後半からです。 それ以前には、スプーンやフォークはめいめいが個人所有で持ち歩くもの、特に銀のスプーンは洗礼や婚約の際にさずけられる貴重な品でありました。ですから当時はたとえ国王と云えども自分のスプーンを持って夜会に出かけていました。

そして、スプーンとフォークを比較すると、スプーンは古くからありましたが、フォークは、特にイギリスでは後発で、なかなか普及しなかった事情があります。 当時の先進地域であったイタリア帰りの人たちが、かの国ではフォークと言うものを使っていたぞよ、などと伝えていって、ようやくイギリスでも流行っていった歴史的経緯があります。

当時はテーブルマナーの黎明期ですから、スプーン一本とフォーク一本で食事をすれば、十分にハイソなイメージだったろうと考えられます。 写真のスターリングシルバー フォークは、そういう時代のごく初期のフォークであって、フォークの用途が細かく分かれているような時代ではなかったので、用途としてはゼネラルな何にでも使うフォークでありました。

もし、ロンドンの博物館で最古の銀フォークを見学される機会がありましたら、思い出していただきたいことがあります。 イギリス最古の銀フォークは、確率50%ほどの確からしさで、日本産の銀で作られていた、あるいは日本産の銀が混じっていた可能性があるだろうと、私は考えています。 1600年頃の世界の産銀量は推定で年間42万キログラムでありました。 南米のポトシ銀山を支配していたスペインが、そのうちの半分を取り扱っていました。 もう半分は、驚くべきことに、日本産でありました。 当時の日本からの銀輸出量は年間20万キログラムにのぼっておりました。

1500年頃の世界産銀量は年間5万キログラム弱でしたので、1600年頃までの百年間で、ほぼ十倍増という明らかなギャップアップが起こっていました。 ポトシ銀山が鉱山の街として成立したのが1546年、日本では戦国武将が各地で金山や銀山を開発していた時代と符合しています。 当時の日本は金銀生産という観点から見て、世界でも有数な資源国でありました。 

イギリス最古の銀フォークが1632年に作られた事実は、やはり当時の世界の産銀量がドーンとギャップアップしたことと関係して、この年代に作られた背景があったろうと考えます。 世界をまわりまわって、イギリスにやってきた銀が、ポトシ銀山産か石見銀山産か、あるいはそれ以前からあった銀が鋳潰されたものか、確定することは難しいですが、上記の経緯を考慮すると、もともとは日本産の銀であった確率も、かなり高いだろうと見ております。 

スターリングシルバー フォーク (イギリス最古のシルバーフォークとはこんなものでした。)







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