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No. 16590 Air Raid Precautions スターリングシルバー ペンダントヘッド
縦の長さ 3.85cm、最大横幅 2.6cm、重さ 8g、最大厚み 2mm強、1938年 ロンドン、一万五千円

以前に同タイプのARPバッジをご紹介しましたが、写真の品はペンダントヘッドになります。 元々はバッジだったのではないかと思いますが、ペンダントヘッドの方が使い勝手がよいこともあって、気に入りました。

Air Raid Precautions とは戦時の空襲監視員あるいは防空指導員のことです。 空襲に備えるべく、警官や予備役の人たちを中心に組織されたと聞きました。 写真の品は1938年作になりますが、これまでに扱った同様なARP銀製品には1936年作もありました。 1936年は英国にとってまだ戦時下ではないのですが、このとき既にARPが組織され備えを始めていたことが分かります。 アンティークから歴史の検証が出来るのはおもしろいことだと思うのです。

裏面にはブリティッシュ ホールマークがしっかり深く刻印されています。 写真二番目で見えるように、ホールマークは順にメーカーズマーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、ロンドンレオパードヘッド、そして1938年のデートレターになります。

こういう品であってもホールマーク シルバーで作られているところが、余裕があると言うか、こだわりがあると言うか、戦争といっても切羽詰った感じが伝わってこないなあと思いました。

近所のゴルフ場でシニアゴルファーのおじいさんからお話を伺いました。 そのゴルフ場は1935年にオープンして七十年以上の歴史があるのですが、そのおじいさんが子供の頃に初めてプレーしたのが1942年だったそうです。 当時は戦争中でガソリンは貴重だったので、芝刈り用のトラクターが使えず、羊を放牧してフェアウェーの芝の長さを調整していたとのこと。 「たまに羊にボールが当たって大変だったよ。」とおっしゃっていました。

そのおじいさんはイギリス貴族というわけではなくて、いわゆる庶民にあたる方と思いますが、イギリスでは戦争中も普通の人たちがゴルフをしていたのかーと。 ガソリン不足で芝刈りが大変だったのは分かるけど、日本のおじいちゃん、おばあちゃんから聞いてきた戦争の苦労と比べると、どうでしょうか? 戦争というものは、勝つ側と負ける側では、やはり桁違いな相違があるものだと感じるきっかけになるシルバーアンティークでした。

ARP 銀製品をお求めいただいたお客様から以下のような到着確認メールをいただきました。 アンティークを手にした時に感じるものがよく伝わってきて興味深いことから、皆様にもご紹介させていただきます。

『商品無事到着いたしました。毎度のことですが、実物はネットの画像より遥かに良いので手にとって驚いております。(あたりまえですが)技術の素晴らしさはもちろんなのですが、これは道具の手入れが万全なればこそ出来る技だなぁと…そんなところまで見えてくる素晴らしい品です。バッヂは型押しでしょうが、お国を護る人々の誇りのようなものを感じます。このバッヂをツイードジャケットの下襟に着けて、洗面器のようなヘルメットを被り双眼鏡片手におとっつぁん方がドーバー海峡上空を注視していたのでせう。しかし、戦時中貴金属を国をあげて接収してしまう国があるかと思えば支給してしまう国もあるのですな。ながなが失礼いたしました。まずは、到着の御報告まで。有難うございました。』

それから、写真二番目で下の方に並んでいる四つのホールマークのうち、左から二番目に刻印されているのがライオンパサント(=横歩きライオンの刻印)になります。 英国製スターリングシルバーの銀純度を保証するマークになり、重要な刻印です。 ライオンパサントの歴史について少し解説しておきましょう。 

横歩きライオンのマークが初めて導入されたのは今から460年ほど前の1544年のことになります。 これは当時テューダー朝のヘンリー八世が行った低品位銀貨の鋳造と関係があります。 歴史上どこの国でも財政が逼迫してくると、悪貨を鋳造することがひろく行われてきました。 日本の江戸時代にも同じようなことがあったと思います。 

銀貨と銀器がほぼ同等な価値を持っていた昔の時代にあっては、お上の定める低品位銀貨の価値でもって、高品位な銀器と交換されてしまっては、損してしまうことになります。 そこでその銀器が92.5%の銀純度であることを保証するマークとして、ライオンパサントが導入されたわけです。 

歴史や伝統に格別なこだわりを持つイギリス人は、ライオンパサント(=横歩きライオンの刻印)にも特別な愛着があって、五百年の長きにわたって、この刻印を使い続けて今日に到っております。

Air Raid Precautions スターリングシルバー ペンダントヘッド

裏面の様子

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