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No.16582 ジョージ三世 スターリングシルバー オールドイングリッシュパターン テーブルスプーン
長さ 20.5cm、重さ 47g、ボール部分の長さ 6.7cm、ボール部分最大幅 4.5cm、深さ 1.1cm、1784年 ロンドン、二万円

今から二百三十年ほど前のアンティークで、英吉利物屋の取り扱い品の中でもかなり古い方の品になります。 ジョージアンの中でも1760年から1820年までのジョージ三世時代は長かったので、アンティークにおいても、この時代の品には「ジョージ三世...」と接頭辞のように国王の名前を冠することが多いのです。

写真三番目のホールマークは順に、ロンドン レオパードヘッド、スターリングシルバーを示すライオンパサント、1784年のデートレター、そしてメーカーズマークです。 ジョージアン シルバーでよく見かけるデューティーマークがありませんが、デューティーマークの導入は1784年12月のことであって、この品はそれよりも古いことが理由です。

ジョージ三世の横顔マーク、すなわち税金支払い済みを示すデューティーマークがないところは、この品がその古さを自ずから語っている部分であり、コレクターの目の付けどころとなっています。

ジョージ三世の時代は1760年から1820年までの60年間で、この時代のメインイベントはアメリカ植民地が本国である英国から独立を企てたことであり、大変な時代でありました。 英国が対米戦争の戦費を補填するために銀への課税を決めたことが、1784年からのデューティーマークの導入となるわけで、そのマークがないことは、アンティークとしての古さの目印となるわけです。

英国でアンティークという言葉を厳密な意味で使うと、百年以上の時を経た品物を指します。 気に入った古いものを使っていくうちに、その品が自分の手元で‘アンティーク’になっていくことは、コレクターの喜びとも言えますが、この銀のスプーンが作られたのは1784年ですので、余裕でアンティークのカテゴリーに入るどころか、その二倍の"ダブル"アンティークともなっているわけで、そんな辺りにもアンティークファンとしての楽しみ方がある品と言えましょう。

二世紀以上の時を経ているという古さはやはりアンティークとして大きな魅力になります。 英国の歴史は比較的安定していたことが特徴で、隣国フランスのように大きな革命や動乱を経験せずに今日に至っており、そのおかげもあってイギリスにはアンティークのシルバーが多く残っているとも言えます。 しかし、この銀のスプーンが作られた頃はイギリスにおいてもかなり世の中が荒れて、政治が混乱した時代でした。 

一つには産業革命の影響で英国社会に大きな変化が起こりつつあって、ロンドンでは打ち壊しのような民衆暴動が頻発していたことがあり、二つには国王ジョージ三世がアメリカ植民地経営に失敗してアメリカ独立戦争を招いたことなどが混乱に拍車をかけました。 18世紀後半にロンドンで起こったゴードン暴動では死者が五百人を超える惨事となって革命一歩手前だったようです。 もし英国史がそのコースを少し外していたら、このスプーンを今こうして見ることもなかったかもしれない、などと思ってみたりもするのです。

かなり古いスプーンをお求めいただいたお客様から、ジョージアンの時代に銀器を使っていた人たちはどんな人たちだったのかというご質問をいただきました。 遠い昔に銀器を使っていたのは豊かな人たちであったに違いありませんが、この問題はよく考えてみると、もっと奥の深い問題であることが分かります。

ジョージアンの時代に銀器を使っていた人たちは、百年ほど前のヴィクトリアン後期に銀器を持っていた人たちよりも、一段と社会階層が上のお金持ちだったと思われます。 ジョージアンの時代には、まだまだ銀は社会の上層階級の占有物であったからです。 ヴィクトリア期には英国の経済力も大いに伸長したので、ヴィクトリアン後期の英国では銀器が新興富裕層にまで普及し、その裾野が広がりました。 つまり銀器を使った昔のお金持ちといっても、二百年前と百年前ではその意味合いや程度が大きく異なるのです。

オールドイングリッシュ パターンについては、英国アンティーク情報欄の「4.イングリッシュ スプーン パターン」を、そしてジョージ三世とデューティーマークについては、「5.シルバーホールマークとジョージアンの国王たち」解説記事の後半もご覧ください。

ジョージ三世 スターリングシルバー オールドイングリッシュパターン テーブルスプーン




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