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No.16450 スターリングシルバー ジャムスプーン
長さ 15.0cm、重さ 31g、ボール部分の長さ 5.4cm、最大幅 3.4cm、柄の最大幅 1.45cm、柄の最大厚み 3mm、1918年 シェフィールド、William Hutton & Sons Ltd作、一万四千円

今から今から九十五年前に作られたスターリングシルバー ジャムスプーンです。 31グラムの持ちはかりですから銀製ジャムスプーンとしてはヘビー級のカテゴリーに入りましょう。 手にしてみると、シルバーハンドルに厚みを感じますし、重厚な銀の質感が特徴といえるアンティークです。 ボール部分のスマートなフォルムや、ゆったりゆるやかに伸びていく柄の様子には品のよさが感じられ、気に入りました。 

写真のアンティークが作られた1918年と言えば、第一次大戦の終戦一年前になります。 イギリスは戦勝国となったものの大変な戦であったことは間違いなく、そんな状況にあっても銀製ジャムスプーンを作っていたとは、イギリスという国の底力を感じさせてくれるアンティークとも思います。

柄は最大で3ミリの厚みがあって、ジャムスプーンとしては厚めに出来ており、ボール部分の銀の厚みも含めて、純銀をたっぷり使ったふっくら系のジャムスプーンに仕上げっております。 ボールサイドに入った切れ込みのノッチ構造や、しっかりと持ちはかりのある作りなど合わせて考えると、英国アンティーク ジャムスプーンの典型といえる雰囲気を持った品と言えましょう。 

写真二番目のように、裏面には四つのブリティッシュ ホールマークがしっかり深く刻印されています。 ホールマークは順にWilliam Hutton & Sons Ltdのメーカーズマーク、1920年のデートレター、、スターリングシルバーを示すライオンパサント、そしてシェフィールド アセイオフィスの王冠マークになります。

英国で「アンティーク」という言葉を厳密な意味で使うと、「百年以上の時を経た品」を指すことになります。 そんな訳で、英語で言うと「It will become an antique in ten years. (この品はあと十年でアンティークになります。)」という言い方をされることがあります。 アンティークコレクターにとっては、やはり百年という年月の経過は大きなメルクマールになりますので、上記のような会話がなされる機会も多いのです。 

このシルバーウェアが作られたのは1918年ですから、正式なアンティークに昇格するまでにあとまだ五年が必要になる計算です。 しかし、気に入った古いものを使っていくうちに、その品が自分の手元で‘アンティーク’になっていくことは、コレクターの喜びとも言えますので、この銀のスプーンには、そんな楽しみ方もあるかと思うのです。

「William Hutton & Sons Ltd」は1800年ちょうどにWilliam Huttonが始めた歴史のある銀工房です。 息子から孫へと家族経営が続き、まわりのシルバースミスを吸収合併しながら、次第に有力メーカーの一つに成長していきました。 そして、ヴィクトリアン後期には、Herbert, Robert, Edwardの三人の孫たちが共同パートナーとなって銀工房が運営されておりました。

末っ子のEdwardには、最も芸術センスがあったのか、本体である「William Hutton & Sons Ltd」のメーカーズマークの他に、独自のメーカーズマークである「EH」刻印の作品が今に残っています。

おそらく、二人の兄たちはファミリービジネスの規模を拡大するという経営面に、より長けていて、末っ子のEdwardは経営より銀そのものに関心が高い人だったのではないかと思うのです。

「William Hutton & Sons Ltd」のメーカーズマークは縦横に並んだ文字配列が特徴的なので、一度でも見れば記憶に残ることでしょう。 楕円形のメーカーズマーク中央に位置する大きなHの文字がマークを四つの領域に分割し、それぞれにW、&、Ss、LDの文字が配された凝った作りのメーカーズマークになっています。

写真のジャムススプーンが作られた当時のイギリスはどんな様子であったのか、アンティークの歴史的背景を知っていく上で参考になる、とてもよい映像資料を一つご紹介しておきましょう。 デイビット・スーシェ主演のポワロシリーズ『The Mysterious Affair at Styles (スタイルズ荘の怪事件)』です。 

原作は1920年に書かれており、時代設定は第一次世界大戦(1914年-1919年)の後半、舞台はイギリスの美しい田園地帯にある村と、そこにあるマナーハウス(領主館)となっております。 一般にポワロシリーズは1930年代のイギリスに時代設定しているのですが、この話は「名探偵ポワロ登場」とも言うべき記念の第一作であって、原作通りに1917年か18年頃のイギリスを描いています。

そうなると、他の作品群と違って1910年代のイギリスが見られるのが著しい特徴です。 戦争のために祖国を離れて疎開してきている外国人たちの様子は、当時のイギリス社会の状況を映しております。 また、登場するクラシックカーを見るだけでも価値ありと言うイギリス人の友人もおります。 確かに1910年代のクラシックカーは、30年代と比べると一段とアンティークです。 クラシックカーのみならず、乗り合いバスや病院馬車なども登場して趣向が凝っています。 

また、マナーハウスの庭でのアフターヌーンティーの様子は楽しいですし、まだ電灯が普及していなかった時代ですので、ランプとロウソクというアンティークな暮らしの描かれ方にも興味を惹かれます。 ロウソク燭台やオイルランプ、夕方になって薄暗くなってもランプを付けない当時の暮らし、ディナーテーブルの様子、夜間も電灯はないのでロウソクを持ち歩いたり、ランプに灯を入れたりします。 時代考証のしっかりした映像作品を見ることは、アンティークの勉強に役立ちます。

スターリングシルバー ジャムスプーン


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