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No. 16154 ジョージ三世 スターリングシルバー オールドイングリッシュ パターン ティースプーン
長さ 13.3cm、重さ 12g、ボール部分の長さ 4.5cm、最大横幅 2.6cm、柄の最大厚み 2 mm、1798年 ロンドン、Samuel Godbehere & Edward Wigan作、一万一千円

このスターリングシルバー ティースプーンは、今から210年以上前の1798年作で、世界史で言えばフランス革命の頃にあたりますので、英吉利物屋の扱い品でもかなり古い品になります。

二世紀以上前にはティースプーンとして使われた品ですが、全長が13.3センチにボール部分の長さが4.5センチもあり、現代的な感覚からはティースプーンとしてはかなり大きいので、デザートスプーンやジャムスプーンとしてもお使いいただけるでしょう。 また、実際にお茶の席でティースプーンとして見かけると、その存在感が印象的で、裏面のブリティッシュホールマークとあわせて、珍しくて話題性のあるアンティークとなります。

写真二番目に見えるホールマークは順に、Samuel Godbehere & Edward Wiganのメーカーズマーク、ジョージ三世の横顔でデュティーマーク、1798年のデートレター、そしてスターリングシルバーを示すライオンパサントになります。

二十一世紀に入り2012年ともなった今日から振り返ると、1900年代の品でもなく、1800年代の品でもない、1798年に作られているのは、やはり飛び切り古いアンティークという気がします。 そして、博物館に飾られるようなアンティークシルバーはいざ知らず、私たちが収集していけるアンティークシルバーウェアとしては、その出現頻度には1780年辺りにボーダーラインがありますので、その意味でも写真の銀スプーンの古さは一級品といえましょう。

大きな時代の流れのなかで、このアンティークの位置づけについては、英国アンティーク情報欄にあります「37. アンティークと歴史経済の大循環について」をご覧になってください。

英国の歴史は比較的安定していたことが特徴で、隣国フランスのように大きな革命や動乱を経験せずに今日に至っており、そのおかげもあってイギリスにはアンティークのシルバーが多く残っているとも言えます。 しかし、この銀のスプーンが作られた時代は、イギリスにおいてもかなり世の中が荒れて、政治が混乱した時代でした。 

一つには産業革命の影響で英国社会に大きな変化が起こりつつあって、ロンドンでは打ち壊しのような民衆暴動が頻発していたことがあり、二つには国王ジョージ三世がアメリカ植民地経営に失敗してアメリカ独立戦争を招いたことなどが混乱に拍車をかけました。 

18世紀後半にロンドンで起こったゴードン暴動では死者が五百人を超える惨事となって革命一歩手前だったようです。 さらに加えて海外からの不安定要因がイギリスを脅かし始めます。 1789年に始まったフランス革命は次第に先鋭化していって、ついに1793年には国王を処刑してしまうまでになりました。 このティースプーンが使われていた頃というのは、おっかなびっくり隣国フランスの様子を窺いながら、当時のイギリスはいつ対岸の火事が飛び火してくるか、ひやひやものでありました。 もし英国史がそのコースを少し外していたら、このスプーンを今こうして見ることもなかったかもしれない、などと思ってみたりもするのです。

それから、柄先にホールマークを刻印することをトップマーキングと言いますが、1800年前後にロンドンで作られたティースプーン等の小物シルバーウェアのトップマーキングにおいては、ロンドン レオパード ヘッドの刻印を省略することが当時流行っていました。 このティースプーンにもロンドン アセイオフィス マークがありませんが、同時期に作られたロンドン物ではよく見かける傾向なのです。 おそらくロンドン中心思考がこうした習慣を生んだと思われますが、1830年ぐらいから以降は改まりきっちり刻印されるようになっていきます。

オールドイングリッシュ パターンについてはアンティーク情報欄にあります「4.イングリッシュ スプーン パターン」の解説記事を、またジョージ三世とデュティーマークについては、 「5.シルバーホールマークとジョージアンの国王たち」解説記事の後半もご参考ください。

ジョージ三世 スターリングシルバー オールドイングリッシュ パターン ティースプーン


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