英国 アンティーク 英吉利物屋 トップ(取り扱い一覧)へ 新着品物 一覧へ アンティーク情報記事 一覧へ 英吉利物屋ご紹介へ

No. 15969 ヴィクトリアン フラワーエングレービング スターリングシルバー ティースプーン SOLD
長さ 11.3cm、重さ 10g、ボール部分の最大幅 2.25cm、ボールの深さ 6.5mm、柄の最大幅 1.2cm、1894年 ロンドン、William Hutton & Sons Ltd作、(6本あります-->2本あります-->SOLD)

お客様から、「アンティークスプーンは何本見てもそれぞれに個性と魅力があって素晴らしい。」とご感想いただきました。

アンティークスプーンの個性と魅力については、やはり当時と現在では人手のかけ方が桁違いであることが背景にあろうかと思います。 スプーン等のテーブルウェアの分野では、百年前には労働集約的な職人さんの作業が大半でした。 現在では人件費の高騰から、人手をかけることはビジネスの弱点になりかねず、大半は機械化されております。 そう考えると、桁違いどころか、人手のかけ方はおそらく百倍あるいは千倍違うというのが本当でしょう。

また、アンティークスプーンには、現代の品と違ったよさのみならず、同じシリーズのスプーンであっても、手仕事ですから彫りの様子がそれぞれに違っており、個体差があってそこにもさらなる個性を感じさせます。 

ひるがえって現代の製品を考えますと、この個体差を出来る限り除いていくことが、目標になってきました。 百年という月日の流れの中で、物作りの背景にある基本的な考え方にも、大きな変化が起こってきているように思います。

それでは、人手のかかった昔の仕事がどういうものか、ご紹介してみたいと思います。 写真のティースプーンは今から百年以上前のエドワーディアン アンティークです。 写真二番目で、柄の部分に施された小花のエングレービングを、比較してご覧になってください。 

長さ、重さ、製作年、そしてシルバースミスが一致しており、パッと見も一緒ですから、同じシリーズのティースプーンであることは間違いありません。 ところが、一本一本が職人さんの手仕事ですから、よく見てみると、小花の表情が異なっていることに気づかれると思います。

これがヴィクトリアン アンティークの姿であり、現代の私たちが見て、その個性と魅力に惹きつけられる、ハンド エングレービングであります。 
手仕事だからこそ生まれてくる人の温かみが、アンティークの魅力の根っこにあるように感じます。

今から百二十年近く前に作られたヴィクトリアン スターリングシルバー ティースプーンになります。 小花が二つ、その他にもハンドエングレービングは凝った技巧が華やかです。 柄先に絞りの入ったフォルムも珍しく、レアなヴィクトリアーナと思います。 ヴィクトリアン後期の1894年に作られており、その古さはやはりアンティークとして魅力になりましょう。 

クイーン・ヴィクトリアが若干18歳の若さで英国王位を継承したのは1837年のことで、この年から1900年までの64年間がヴィクトリア時代にあたります。 ヴィクトリア女王は在位期間が長かったことと、その時代は英国の国力が格段に伸張した時期と重なっていた為に、イギリス史の中でも特にポピュラーな国王となりました。 アンティークの分野にあっても、この時代の物品を指すヴィクトリアーナ(Victoriana)という用語もあって、ヴィクトリア時代を専門とするコレクタターが大勢いるわけなのです。

写真三番目に見える裏面のホールマークは順に「William Hutton & Sons Ltd」のメーカーズマーク、ロンドン レオパードヘッド、スターリングシルバーを示すライオンパサント、そして1894年のデートレターとなります。

この銀のティースプーンが作られた時代を、日本史の視点から探ってみると、1890年に第一回帝国議会、1894年日清戦争などあり、いわゆる『坂の上の雲』の時代にあたっております。 ずいぶんと昔のアンティークであることが、あらためてお分かりいただけると思います。  

「William Hutton & Sons Ltd」は1800年ちょうどにWilliam Huttonが始めた歴史のある銀工房です。 息子から孫へと家族経営が続き、まわりのシルバースミスを吸収合併しながら、次第に有力メーカーの一つに成長していきました。 そして、ヴィクトリアン後期には、Herbert, Robert, Edwardの三人の孫たちが共同パートナーとなって銀工房が運営されておりました。

末っ子のEdwardには、最も芸術センスがあったのか、本体である「William Hutton & Sons Ltd」のメーカーズマークの他に、独自のメーカーズマークである「EH」刻印の作品が今に残っています。

おそらく、二人の兄たちはファミリービジネスの規模を拡大するという経営面に、より長けていて、末っ子のEdwardは経営より銀そのものに関心が高い人だったのではないかと思うのです。

「William Hutton & Sons Ltd」のメーカーズマークは縦横に並んだ文字配列が特徴的なので、一度でも見れば記憶に残ることでしょう。 楕円形のメーカーズマーク中央に位置する大きなHの文字がマークを四つの領域に分割し、それぞれにW、&、Ss、LDの文字が配された凝った作りのメーカーズマークになっています。

それから、この品のデートレターをご覧いただくと、その形が盾状をしていて特徴があります。 ロンドンアセイオフィスにおける19世紀のほぼ第四四半期にあたる1877年から1895年までのデートレター サイクルは「盾」と覚えておかれると、アンティークハントの時には便利です。 この時代はイギリスの国力が大いに伸張した時期にあたることから、今日においてもこの頃のアンティークに出会う可能性も高いのです。 デートレターをすべて暗記することは難しくても、「ロンドンの盾はヴィクトリアン後期」と知っておくと役に立つことがありましょう。

この品が作られたヴィクトリア時代の背景については、英国アンティーク情報欄にあります「14. Still Victorian」や「31. 『Punch:1873年2月22日号』 ヴィクトリアンの英国を伝える週刊新聞」の解説記事もご参考まで。

ヴィクトリアン フラワーエングレービング スターリングシルバー ティースプーン




イギリス アンティーク 英吉利物屋 トップ(取り扱い一覧)へ 新着品物 一覧へ アンティーク情報記事 一覧へ 英吉利物屋ご紹介へ