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No. 15806 ヴィクトリア時代の英国製 1852年から1861年までに作られたシルバー プレート サルヴァ SOLD
直径 20.3cm、重さ 265g、ヴィクトリア時代の英国製 1852年から1861年までの作、 BENETFINK & Co. LONDON 作、SOLD

初めに手にした時はヴィクトリアン後期の作かなと思いましたが、詳しく見ていったらデザイン登録の刻印があって、ヴィクトリアン前期から中期の英国製であると判明、当初の見立てより古いことが分かりました。 さらに調べを進めたところ、他にも手掛かりが見つかって、刻印されているメーカー名の呼び名から、製作年を1852年から1861年までの十年以内にまで絞ることが出来ました。

詳しくは以下に述べますが、百五十年以上も昔に作られたことが確かであると分かってみると、やはりこの圧倒的な古さは、アンティークとしての大きな魅力になっていると感じます。

品のよさが伝わってくるアンティークで、とても気に入りました。 元々はシルバープレート品でありましょうが、いい感じに時を経て、今ではブラスのベースメタルが卓越しており、古びた味わいと同時に奥ゆかしい雰囲気を醸し出しております。  お薦めできるヴィクトリアン アンティーク サルヴァと思います。 

これだけ上手い具合に年をとって、渋い味わいが楽しめることを多としたい。 とはいえ、そうなり得るのは、もともと品物がいいんだと思います。 裏面にはメーカーズマーク以外に、製造番号の「5041」も刻印されており、その面からもよい品と見ました。

BENETFINK & Co
CHEAPSIDE
LONDON
5041 

と刻印されています。

八頂点の星型デザインで、もっとも内側にはハートが八つで輪になっています。 星の各頂点も小さなハートが組まれていて、さらにトレーの周辺部にもハートがたくさん並んでいます。 これだけハートがいっぱいですと、ヴィクトリア時代のハートの流行とはこういうことなのかと思ってもみました。

現代でも馴染み深いハートのデザインですが、その歴史をたどりますと、英国におけるハートのモチーフはジョージアンの頃登場し、ヴィクトリア期に大流行した経緯があります。 

ただ、それぞれのハートをよく見てみると、クルッと巻いたダブルスパイラルのハート型デザインとなっており、これはケルティック シェブロンという解釈も可能です。

渦巻き模様は「Growth(成長)」や「Energy(活力)」を象徴し、ケルティックアートにおけるベーシックの一つです。 さらに、ハートの中にダブルスパイラルが入ったデザインは、シェブロン スパイラルと呼ばれ、遠い昔のケルトの人たちにとっては「Power(力)」の象徴であり、転じて「計画、実行、そして完成」を意味するシンボルでした。 

ハートの形に見えますが、実はその由来は弓矢の先に付ける鏃(やじり)であり、そこからパワーの意味合いが生まれています。

写真二番目をご覧ください。 写真を縦横四分割した場合の左下方、エッジ周り装飾と星型飾りの中ほどに見える菱形のマークは、イギリスのパテントオフィスにデザイン登録したことを示すマークです。 ヴィクトリア時代の1842年から1883年まで、この「菱形登録マーク」制度がありました。 

丸皿アンティークのデザインは、今見てもなかなか見事な作品と思いますが、実際のところ、このヴィクトリアン工芸の作者は、デザインをパテントオフィスにわざわざ登録して特許を取っていたわけで、自信を持って世に送り出した、ヴィクトリアン デザインの一つだったろうと理解できます。

写真のアンティークの場合には、刻印の様子や細工の様子から見てもヴィクトリアンのアンティークと推定できますが、さらに「菱形登録マーク」が決定的な証拠となって、ヴィクトリアン アンティークの中でも1842年から1883年までにデザイン登録がなされたことが分かることは、整理や分類好きなイギリス人気質に由来しており、その点でも Very Britishなアンティークと考えられます。

アンティークシルバーを扱っておりますと、英国のホールマーク制度は、その歴史の長さ、制度の継続性、シルバースミスへの徹底の度合い等すべての面で欧州諸国の中でもピカイチと感じます。 博物学を発展させてきたイギリス人は、物事を整理分類するのが大好きで、500年以上にわたりホールマーク制度を維持し発展させてきました。

この品の場合はシルバーホールマークの対象ではありませんが、こんどはイギリスのパテントオフィス制度が、アンティーク年代特定のメルクマールとして大きな役割を果たしていることが分かるのです。 

手掛かりが多いという点で、イギリス アンティークのコレクターは恵まれた環境にありますが、これらはやはりイギリス人の国民性によるところが大きいように思います。 旅してみると感じるのですが、欧州人にも気質の違いがあって、偏見かも知れませんが、同じことをイタリア人やスペイン人に要求しても、無理な感じがしないでもありません。

視覚的に美しいのみならず、見所や手掛かりが多く、このアンティークの背景を追求していくと、英国人の国民性まで見えてくる、興味深いヴィクトリアーナと思います。

写真のアンティークを作った BENETFINK & Coの所在地であったロンドンのチープサイドとは、金融街シティーの中にあって、地下鉄の駅でいうとバンク オブ イングランドの最寄り駅であるバンク駅から、お隣でセント・ポール大聖堂のあるセント・ポール駅あたりまでを言います。 

バンクからセント・ポールまで距離にして五、六百メートル、チープサイド通りを端から端まで歩いても十分か十五分で巡れます。 ロンドン観光の際には立ち寄られることもありましょうし、今でも興味深い界隈なので、お勧めしておきたいと思います。

BENETFINK & Coは、ヴィクトリア時代を通じて幾度か名前が変わっており、Ben & Jonesとか Benetfink & Foxとか、Benetfink & Companyと呼ばれる時代もありました。 BENETFINK & Coの名称は1852年から1861年まで使われていたようなので、さらにこの品の製作時期を絞り込むことが出来ました。 少なくとも今から一世紀半前のアンティークであることが確かです。

写真四番目はヴィクトリア時代のBENETFINKの広告です。 ビル一棟を占めて、扱い品はエレクトロプレート シルバーウェア、シャンデリア、ランプ等々の大きな百貨店であったことが分かります。 ちなみにこのアドレスで現在の様子を調べてみると、広告に描かれている立派なビルは現存していることも分かりました。 今ではたくさんのテナントが入ったビルになっているようです。

ヴィクトリア時代の英国製 1852年から1861年までに作られたシルバー プレート サルヴァ






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