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No. 15751 ヴィクトリアン スターリングシルバー ブライトカット ジャムスプーン
with シェル
長さ 11.5cm、重さ 15g、ボール部分の最大幅
3.2cm、ブライトカット柄の最大幅 1.2cm、柄の最大厚み
2.5mm、1895年 ロンドン、George Maudsley Jackson作(=Josiah
Williams & Co.作)、八千二百円
小振りな品ながら、ボール部分のシェルデザインとブライトカットの施された柄に特徴を持つヴィクトリアン アンティーク シルバーで、バランスのよさを感じさせる銀のジャムスプーンです。 ボール部分手前に色変わりして黒くなった小さな部分がありますが、それ以外は、まず美しいジャムスプーンと言ってよいでしょう。
難があるといえばある品ですが、百二十年近く前のヴィクトリア時代終わり頃に作られて、21世紀の今日に至るまで大事に扱われて、今でもピカピカに磨かれた銀です。 こういう銀を見ていると、これから先の五十年、百年もまた大切に取り扱ってあげられればと思うのです。
もう一つ、銀のスプーンをお求めいただいたお客様からのご感想です。
『さて、実際に手に取ってみると、なかなか素敵な物です。銀だから価値があるというより、これだけの年月を経て、なおちょっとしたお手入れをするだけで、作られた当時とほとんど同じ状態で使い続けられるという点の価値はすごいと思います。まとめ買いした安いスプーンがいつの間にかどこかにいってしまったり、曲がったりすり減って黒くなり、何回も買い直していることを考えると、世代を超えて使われる銀器は節約の象徴のような気もしてきます。』
銀をお手入れしながら使っていくことの意味について、まさにわが意を得たりというコメントでありましたので、ご紹介させていただきました。
ボール部分に見えるシェルパターンは、12世紀にスペインの聖地
St.ジェイムス オブ コンポステラへ向かう巡礼者たちが、彼の紋章であったシェルを身につけて旅したことから、クリスチャンシンボルとして、シェルが取り入れられていったのが始まりです。 15世紀以降はセラミックスやシルバーの分野で、このシェルモチーフが繰り返し取り上げられて今日に至っています。
柄に施されたブライトカットは、ジョージアン以来のイギリスの伝統が踏襲されたデザインで光を美しく反射して綺麗です。
裏面のブリティッシュ ホールマークは順に1895年のデートレター、スターリングシルバーを示すライオンパサント、ロンドン レオパードヘッド、そして刻印がややあまいですが、George
Maudsley Jacksonのメーカーズマークになります。
ブライトカットの彫刻が美しく、シェルのモチーフ、そして結構な古さと、三拍子揃った見所の多いよいアンティークシルバーと思い、気に入って求めました。
ブライトカットは18世紀の終わり頃から、英国においてその最初の流行が始まりました。 ファセット(彫刻切面)に異なった角度をつけていくことによって、反射光が様々な方向に向かい、キラキラと光って見えることからブライトカットの呼び名があります。 この装飾的なブライトカット技術が初めて登場したのは1770年代でしたが、それは良質の鋼(はがね)が生産可能となってエングレービングツールの性能が向上したことによります。
この品は1895年の作なので、二百余年にわたるブライトカット装飾技法の歴史の中でも、技法の成熟&完成期につくられた品となります。 その後はイギリスの歴史が下り坂に入っていきますので、これほどの作品はあまり見かけなくなってゆくのは致し方ないところでしょう。
お手元にルーペがあれば、眺めて楽しいアンティークに仕上がっております。 写真のティースプーンに施された彫刻を詳細に見ていくと、ブライトカットのみならず、その周辺に見られる彫刻の繊細な様子から、イギリスや英国銀製品がピークを迎えていた時代に作られたアンティークであることが、お分かりいただけると思います。
英国でアンティークという言葉を厳密な意味で使うと、百年以上の時を経た品物を指します。 気に入った古いものを使っていくうちに、その品が自分の手元で‘アンティーク’になっていくことは、コレクターの喜びとも言えますが、この銀のスプーンが作られたのはヴィクトリアン後期の1895年のことですので、余裕でアンティークのカテゴリーに入るわけです。
George Maudsley JacksonはJosiah Williams
& Co.の共同パートナーの一人であったことから、GMJはJosiah
Williams & Co.と実質同体と考えてよいシルバースミスになります。
ホールマークのガイドブックである『JACKSON'S
HALLMARKS』によれば、「GMJ」についてのコメントは「Wide
range of particularly good flatware.」とありますので、GMJ単体の評価もかなり高いのですが、Josiah
Williams & Co.も有名シルバースミスの一つです。
一般にヴィクトリア時代創業のシルバースミスが多い中にあって、Josiah
Williams & Co.はジョージアンの時代に始まった老舗の一つになります。 1800年創業のJosiah
Williams & Co.はブリストルのメーカーで、地方では最大のシルバースミスでした。 今日でも中世の街並みや大聖堂が美しいブリストルは、16世紀にはエイボン川河口の貿易港として栄え、その後はイングランド南西部の主要都市として発展しました。 しかし大きな都市であったがゆえに、第二次大戦中の1940年11月24日にはドイツ軍による空襲を受け、Josiah
Williams & Co.も工房を失い、残念ながら140年の歴史に幕を閉じました。
それから、この品のデートレターをご覧いただくと、その形が盾状をしていて特徴があります。 ロンドンアセイオフィスにおける19世紀のほぼ第四四半期にあたる1877年から1895年までのデートレター サイクルは「盾」と覚えておかれると、アンティークハントの時には便利です。 この時代はイギリスの国力が大いに伸張した時期にあたることから、今日においてもこの頃のアンティークに出会う可能性も高いのです。 デートレターをすべて暗記することは難しくても、「ロンドンの盾はヴィクトリアン後期」と知っておく価値はあると思います。
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