英国 アンティーク 英吉利物屋 トップ(取り扱い一覧)へ 新着品物 一覧へ アンティーク情報記事 一覧へ 英吉利物屋ご紹介へ

No. 15683 アイビー モチーフ ヴィクトリアン スターリングシルバー クリスニング スプーン
長さ 14.3cm、重さ 28g、最大幅 3.15cm、ボールの深さ 0.9cm、柄の最大幅 1.4cm、1899年 シェフィールド、James Deakin & Sons Ltd作、一万二千円

今から百十年以上前に作られたスターリングシルバーのクリスニング スプーンです。 ヴィクトリア時代の終わり頃、19世紀末に作られており、かなり古いアンティーク シルバーであることは魅力となりましょう。 

ちなみにヴィクトリアンの物品を示すアンティーク専門用語に「Victoriana」という言葉があります。 ヴィクトリア時代は1837年から1900年までの六十余年の長きにわたり、英国の国富が大いに伸びた時代なので、アンティークコレクターにもヴィクトリアーナ専門という方が英国には結構いらっしゃるようなのです。

両面に施されたアイビーのレリーフ装飾が美しく、モチーフが持つ意味合いの良さと同時に、コンディションの良さにも惹かれて求めたヴィクトリアン アンティークになります。 

コンディションの良さから察するに、おそらくあまり使われることなく今日に至っているものと考えられます。 クリスニング スプーンというのは、お祝い品であることから、そのまま仕舞い込まれて使われずに今に残っていることがあり、アンティークとしてはありがたいケースなのですが、この品もそうした事例の一つです。

アイビー装飾は両面にわたっていて、写真二番目のように裏面のボール部分にもたくさん実をつけたアイビーが及んでいます。 両面装飾は比較的に珍しく、グッドポイントになります。 ということで、伏せて置いてみるのも、ブリティッシュ ホールマーク &アイビー装飾にゴージャス感があってよいでしょう。

19世紀後半からしばらく、ヴィクトリアンやエドワーディアンのイギリスでは、当時の自然主義的傾向にアイビーがよくマッチした為、バルコニーやガーデンファーニチャーに絡まるアイビーが大変好まれました。 アイビーは蔦がしっかりと絡まることから、Fidelity(忠実ないしは誠実)、Friendship(友情)、あるいはMarriage(結婚)を象徴するモチーフとされます。 そしていつも緑であることから、Immortality(不滅)や Eternal Life(永遠の魂)を表すクリスチャンモチーフともなっています。

写真三番目にあるように、ボール部分の裏面には四つのブリティッシュ ホールマークがしっかり深く刻印されているのもこの品のよい特徴です。 ホールマークは順に 「James Deakin & Sons Ltd」のメーカーズマーク、1899年のデートレター、スターリングシルバーを示すライオンパサント、そしてシェフィールドの王冠マークになります。

「James Deakin & Sons Ltd」は1865年にジェームス・ディーキンによってシェフィールドで創業されたのが始まりです。 1886年には彼の三人の息子達、ウィリアム、ジョン、アルバートもパートナーに加わり、ファミリービジネスとして上述の社名に変更し、事業は順調に発展していきました。 1888年にはロンドン支店開設、ヴィクトリア後期の1890年代には、スコットランドのグラスゴーとアイルランドのベルファストにも支店を開設しています。 

しかし多くのシルバースミスがそうであったように、事業のピークは英国の国力がピークであったビクトリア後期からエドワーディアンの時代にあったようです。 その後は事業を次第に縮小していき第二次世界大戦が始まった1940年には店を閉めました。 メーカーズマークの「JD WD」はJohn & William Deakinのイニシャルになっています。

あまり知られていないようですが、アイビーは植えてから五年ほど経つと、花を咲かせてたくさんの実をつけるようになります。 我が家のレンガの壁面にもアイビーがありますが、年月が経っているので実を結びます。 クリスニング スプーンに「アイビー&実」というデザインが採用されている背景には、やはり実をつけたアイビーが縁起物としておめでたいという感覚が、ヴィクトリアンのイギリスにもあったのではないかとみています。 この辺りの事情は日本の感覚からしても納得できるもので、洋の東西を問わず同じではと思うのです。

それから、クリスニングスプーンあるいはセットとは、洗礼式あるいは命名式のお祝いに子供に与えられた品です。 古くは、12使徒が柄についたアポストルスプーンがプレゼントされたりしていたようですが、19世紀の初めからは、デザートセットくらいの大きさの装飾的なナイフ、フォーク、スプーンのセットが用いられるようになりました。 また、加えてマグカップなどもセットに入っていることもあったようです。 さらに19世紀後半以降はナプキンリングが加えられるセットもあったようです。

この品が作られた1899年というのは、19世紀の終わり頃であるとともに、六十余年続いたヴィクトリア時代の終り頃にもあたっています。 当時の様子については、英国アンティーク情報欄にあります「14. Still Victorian」や「31. 『Punch:1873年2月22日号』 ヴィクトリアンの英国を伝える週刊新聞」の解説記事もご参考ください。 

アイビー モチーフ ヴィクトリアン スターリングシルバー クリスニング スプーン



裏面の様子

イギリス アンティーク 英吉利物屋 トップ(取り扱い一覧)へ 新着品物 一覧へ アンティーク情報記事 一覧へ 英吉利物屋ご紹介へ