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No. 15582 エドワーディアン Forget-me-not (勿忘草) フラワーエングレービング スターリングシルバー ジャムスプーン
長さ 11.8cm、重さ 15g、ボール部分最大幅 2.75cm、柄の最大幅 1.05cm、1903年 シェフィールド、一万二千円

もともとは15582 ジャムスプーンと、15572 ピクルスフォークと、15574 バターナイフで、三本セットを構成しておりました。 柄先のイニシャルを入れるところの彫刻はハートシェイプで同じですし、すべて同一メーカーによる1903年の作となっています。 

セットでお求めいただける場合には、三本セットで二万八千円とさせていただきます。

今から百年以上前、エドワーディアンの時代が始まった頃に作られたスターリングシルバー ジャムスプーンです。 ボールの柄元がカットされたタイプのジャムスプーンは、大陸ヨーロッパ諸国ではあまり見かけないので、英国風なジャムスプーンと言ってよいでしょう。

ボール部分のエングレービングは彫刻線の強弱がよく効いて美しい仕上がりになっています。 ブライトカット様の深めな彫りは光を美しく反射します。 また微細な直線カットを重ねた彫りやジグザグカットの配列など、様々な技巧が施されていて、アンティークハント用のルーペが一本あれば楽しみも増すと思います。 

柄先にはイニシャルを入れるところがあります、ハートシェイプで可愛らしいと思います。 イニシャルは彫られていないので、新しいオーナーの方がご自分のイニシャルを入れることも出来ましょう。

写真二番目に見えるブリティッシュ ホールマークは順にシェフィールド アセイオフィスの王冠マーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、1903年のデートレター、そしてメーカーズマークになります。

ボール部分と柄先に近いあたりに、繊細な小花の彫刻が二つ施してあります、花の様子からみてForget-me-not (勿忘草) でありましょう。 

わすれな草はヨーロッパを原産とする、薄青色の小花が可憐な一年草で、信実とか友愛のシンボルとされます。 花言葉は「Forget-me-not」そのもので、「忘れないで」です。

「Forget-me-not」はイギリスのフィールドでよく見られる花で、昔から咳止めなどの薬草としても使われてきましたので、人気があって役に立つ花です。 イギリスの勿忘草は、細かく言うと四つほど種類があります。 野原で一般的なのは「フィールド勿忘草」、森の中で見られる「ウッド勿忘草」はやや大型です。 イエローからブルーに色が変わっていくのが「チェインジング勿忘草」で、ふさが特徴の「タフティド勿忘草」もあります。

日本語で「忘れな草」を「勿忘草」と書くと、漢文調な雰囲気で古っぽく見えて、万葉集や古今和歌集にも出てきそうな日本古来の野草のようにも感じます。 実際には「Forget-me-not」が日本にやってきたのは、百年とちょっと前のことで、「勿忘草」or「わすれな草」と訳語の日本名が付けられたのは、日露戦争があった1905年のことでした。 写真のジャムスプーンが作られたのは1903年ですので、ちょうどこの頃に、日本語の「勿忘草」or「わすれな草」が誕生したとわけです。

それでは、イギリスではどうかと言うと、これまた日本と同じ事情で、実は「Forget-me-not」という名前は舶来品の訳語でありました。 「Forget-me-not」という花の名は、元々は中世ドイツの伝説が起源で、ドイツ語の「忘れないで!」というのが、根っこになって世界中に広がっていったのです。 この伝説をもとにしたポエムをイギリス人のサミュエル・コルリッジが書いたのが1802年でありました。 そしてこれが英語の中に「Forget-me-not」が受容されるきっかけになったのです。

ドイツ起源の「勿忘草」がデンマークやスウェーデンに伝わり、そしてフランスに伝わり、イギリスに入ってきたのが1802年、それから百年ほどして日本へ、言葉の伝播の歴史も興味深く思います。

エドワーディアン Forget-me-not (勿忘草) フラワーエングレービング スターリングシルバー ジャムスプーン


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