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No. 15508 ヴィクトリアン スターリングシルバー オールドイングリッシュ パターン ティースプーン with ハンドエングレービング SOLD
長さ 12.8cm、重さ 17g、ボール部分の長さ 4.3cm、最大幅 2.7cm、ボールの深さ 7mm、柄の最大幅 1.3cm、柄の最大厚み 2mm弱、1867年 ロンドン、Henry Holland作、SOLD

今から百四十年以上前のヴィクトリアン中期に作られたシルバー スプーンで、銀は厚めで持ちはかりがあり、しっかり出来たヴィクトリアーナです。 流麗なハンドエングレービングは、植物文様とウェーブパターンの融合デザインですが、ヴィクトリアン中期の質実剛健な雰囲気もよく出た彫刻で興味を惹かれます。 

また、写真のアンティークが作られたのは、日本史で言えば幕末、明治維新というエポックメイキングな年に当っており、その意味でも歴史を感じさせてくれるアンティークと思います。

写真三番目に見えるように、裏面には「30 Dec 1867 (1867年12月30日)」と日付が彫られていて興味深く思います。 暮れも押し迫った1867年の師走ですが、この頃の日本は激動の時代でした。 1867年6月には坂本竜馬が「船中八策」を提示しております。 ところが11月にはその竜馬が暗殺されてしまいました。 この銀スプーンに彫られている12月には王政復古の大号令、そして翌年1月には鳥羽・伏見の戦いに続いていきます。 こうして振り返ってみると、写真の銀スプーンの凄い古さがお分かりいただけるでしょう。 

振り返って英国史における1867年はと言いますと、六十余年続いたヴィクトリア時代のちょうど真ん中頃に当たっております。 クイーン・ヴィクトリアが若干18歳の若さで英国王位を継承したのは1837年のことで、この年から1900年までの64年間がヴィクトリア時代にあたります。 ヴィクトリア女王は在位期間が長かったことと、その時代は英国の国力が格段に伸張した時期と重なっていた為に、イギリス史の中でも特にポピュラーな国王となりました。 アンティークの分野にあっても、この時代の物品を指すヴィクトリアーナ(Victoriana)という用語もあって、ヴィクトリア時代を専門とするコレクタターが大勢いるわけなのです。

裏面のホールマークは順に Henry Hollandのメーカーズマーク、ロンドン レオパードヘッド、スターリングシルバーを示すライオンパサント、1867年のデートレター、そしてヴィクトリア女王の横顔マークです。

この品を作った「Henry Holland」は有名シルバースミスの「Holland, Aldwinckle & Slater」と実質同体で、英国シルバーウェアの歴史の中でも大きな役割を果たしてきた有力メーカーの一つです。 イギリスのアンティーク シルバーウェアに関する参考書を紐解きますと、ヴィクトリア期の重要シルバースミスとして、ジョージ・アダムスとフランシス・ヒギンスが挙げられることが多いようです。 この二大メーカーを繋ぐ役割を担ったのが「Holland, Aldwinckle & Slater」でありました。 

「Holland, Aldwinckle & Slater」はヴィクトリア時代が始まった翌年の1838年に、ヘンリー・ホランドがロンドンで創業した銀工房です。 1866年にはElizabeth Eaton & Sonを買い取って、事業規模を拡大していきます。 1883年には新たに二人のパートナーが加わり、工房名は「Holland, Aldwinckle & Slater」と変わりました。 その後もいくつかのシルバースミスを買収し、ヴィクトリア期を通じて有力なシルバースミスに成長していきましたが、1883年にこの時代の最有力シルバースミスであったジョージ・アダムスのChawner & Coを買収したことは大きな出来事となりました。 Chawner & Coから移ってきた腕の確かな銀職人たちは「Holland, Aldwinckle & Slater」の名声を高めることとなったのです。

その後の工房史も見ておきますと、エドワーディアンの時代以降まで優秀な銀職人が集まる一流メーカーとして活躍しましたが、1922年にはフランシス・ヒギンスに買収されることになって、その歴史を終えました。 ヴィクトリアンとエドワーディアンの時代を通して、英国シルバーウェア史の中心に常に位置してきた「Holland, Aldwinckle & Slater」は、当時の一流メーカーの一つと言ってよいでしょう。

この品が作られたヴィクトリア時代については英国アンティーク情報欄にあります「14.Still Victorian」や「31. 『Punch:1873年2月22日号』 ヴィクトリアンの英国を伝える週刊新聞」の解説記事もご参考ください。

上記にあります週間新聞パンチの発行年月が1873年2月で、このティースプーンが作られた1867年にかなり近いことは、時代背景を知る上で特に興味を覚えます。

ヴィクトリアン スターリングシルバー オールドイングリッシュ パターン ティースプーン with ハンドエングレービング





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