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No. 15491 透かしの花、小さなクロス &
ホーリーチャリス(聖杯) フランス製 シルバー ペンダントヘッド
縦の長さ(留め具含む)3.5cm、横の長さ 2.5cm、厚さ
1mm、1906年頃のフランス製、一万一千二百円
周辺部分はフラワーピアストワークが美しく、花の左右にはクルッと巻いた飾りがハートのようです。 ホーリー
チャリス(聖杯)上には玉子状の飾りが載っていて、その中に小さなクロスが彫られています。 上部の留め具円環部分にはフランス製シルバーのスタンダードマークである「いのししの頭」マークと、菱形のフランス製メーカーズマークが刻印されています。
ホーリー チャリス(聖杯)はイエス・キリストが最後の晩餐で使ったとされる杯です。 フランス製のクロスでは、表にイエス・キリスト、裏にはホーリー
チャリス(聖杯)という組み合わせを時々見かけます。 そうしますと、写真の銀製ペンダントヘッドの場合には、イエスがデザインされているのと、ほぼ同等な意味合いがあるのかなと感じております。
『No. 15526 フランス製 ブラス クロス with
INRI &ホーリーチャリス(聖杯)』もご参考まで。
ちなみに歴史上、これがイエスが使った聖杯だとされる品が三つ、四つあるようです。 メトロポリタン美術館所蔵のチャリスなどは、けっこう大げさなデザインで、まさかそれはないだろうと思ってしまうような杯もあるようです。
また、中世ヨーロッパの聖杯伝説とは、この聖杯を追い求める騎士たちの物語を一般に指します。 有名どころでは、トマス・マロリーの
『アーサー王物語』もその一つです。 聖杯伝説においてはホーリー
グレイル(聖杯)という言い方をします。
テンプル騎士団の隠した聖杯だとか、ナチス・ドイツも聖杯探しに奔走したとか、あるいは近年でも映画の題材にしばしば出てくる聖杯なので、興味を惹かれる方も多いのではないでしょうか。
小さなホールマークを手掛かりにフランス製と分かるのは、この銀アクセサリーの興味深いところです。 一般にフランス製シルバーにはデートレターの定めはありませんが、写真二番目のように裏面には日付が彫られていて、「June
14th 1906」(1906年6月14日)とあります。 おそらくこの銀飾りが作られたのは、今から百年以上前の1906年頃と推定されます。
フレンチシルバーのホールマークはその小ささが特徴で、ちょっと見ただけでは分かり難いのですが、アンティークハント用のルーペがあれば、とても小さな手掛かりを読み取ることで、フランス製であることが解読できます。 この機会にフランスのホールマークについて少し解説しておきましょう。
1838年に導入されたフランス製シルバーのスタンダードマークにはいくつかの種類があります。 大きめな銀には知恵と武勇の女神、ミネルバの横顔マークを、そして比較的小さな銀には「いのししの頭」あるいは「蟹」のマークが刻印されます。
ただ、問題は「いのししの頭」と「蟹」のマークの大きさが、1.25mm*1.75mmと小さいので判読が難しいことです。 まず、マークサイズが小さいので見落としがちになり、ホールマークからこの品はフレンチらしいと気付くのに時間がかかります。 そしてさらに、小さな刻印の中に描かれた図柄まで識別するには、刻印の表面をクリーニングする必要も出てきますし、やはりルーペの助けが必要にもなるのです。
ちょっと思い出したのですが、ポワロが胸に着けている銀製フラワーホルダーをご存知でしょうか。
ブートニエール(フランス語)という小さな花束を挿して身につけるブローチ、あの品は原作から考えるにおそらくベルギー製です。
デイビット・スーシェのテレビ版では、The Chocolate
Boxというお話の中で、ハナ・チャンセラー演じるベルギー女性からプレゼントされた品ということになっていました。 ポワロシリーズの中でも見所の多いよいお話だったと思います。
これまでの経験からは、イギリスで銀製フラワーホルダーを探しても、まず見つかりません。 写真のアンティークシルバーについても、気のきいた美しさで、やはりフランスやベルギーあたりの気配を感じさせてくれます。
思うに、ファッション系の銀製品は、イギリスよりベルギーだとかフランスあたりの方が得意だったのではないでしょうか。
英国のドーバーからフランスのカレーまで、英仏海峡をまたぐドーバーフェリーを利用して、フランスやベルギーに出かけることがあります。 短い船旅になりますが乗客は自動車から降りて、船内のレストランやパブそしてお土産店など巡ったり、あるいはデッキで海を眺めて過ごします。 英仏間のフェリーですから、当然のことながら乗客の多くは英仏人になりますが、不思議と英仏の女性については、見分けがつくのです。
フランス女性はジュエリーを身に着けていたり、あるいはスカーフをちょっとあしらったりしているので、遠くから見てフランス人かなと予想していると、なるほどフランス語をしゃべっているわけです。 ところがイギリス女性は華やいだ雰囲気と縁遠いことが多くて、お化粧していない女性はまずイギリス人と見て間違いありません。 海を渡った向こうのファッション系シルバーアンティークの雰囲気がそのまま英仏女性の違いに出ているように思うのです。
英仏女性のおしゃれ感やアクセサリーの好みは昔からあまり変わっていなくて、百年以上前から続く歴史の延長上に現代の人たちの暮らしがあることを、あらためて感じさせてくれます。
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