英国 アンティーク 英吉利物屋 トップ(取り扱い一覧)へ 新着品物 一覧へ アンティーク情報記事 一覧へ 英吉利物屋ご紹介へ

No. 15186 ヴィクトリアン スターリングシルバー バターナイフ
長さ 15.5cm、重さ 21g、ブレード最大幅 1.9cm、柄先の飾り直径 7mm、1893年 ロンドン、George Maudsley Jackson作(=Josiah Williams & Co.作)、一万二千八百円

今から百年以上前のヴィクトリアン後期に作られたスターリングシルバーのアンティーク ナイフです。 柄先の飾りが印象的で、ねじれ柄の構造は強度の追求と同時に、デザイン的な美しさをも狙っていて好印象です。 

今から百十五年も前に作られたアンティークながら、コンディションが良好なところもポイントになりましょう。 バターナイフとして作られたものでしょうが、デザイン性の高さと適度なサイズからすると、レター開封用のペーパーナイフとしてお使いいただくのもよいかと思います。

この銀ナイフはフォルムがいいこと、ホールマークはっきりでシルバースミスがいいこと、ヴィクトリアーナで120年近い古さ等々で、けっこう気に入って、今はデスク周りで、ペーパーナイフとして使っております。刃先はそれほど鋭くないので安全ですが、ブレード根元あたりに親指をかけて、スパッとやれば、ペーパーナイフとしてもよく働いてくれます。 もちろん、元々はバターナイフとして作られたものでしょうから、朝食用に使われたら、ナイフは喜ぶかも知れません。

バターナイフは元々バタースペードという鏝状(こて状)のシルバーウェアから発展してきた経緯があります。 このシルバーナイフはバタースペードと同じようなこて状ブレードを持ち、ブレード面に対して柄先が2センチ以上高い位置にくる構造となっています。 その昔の「こて状バタースペード」の面影を残しているという意味で、バターナイフの歴史的発展過程を示しているわけで、博物館的な興味を感じさせてくれるアンティークとも言えましょう。

写真三番目のホールマークは順に、「GMJ (=George Maudsley Jackson)」のメーカーズマーク、1893年のデートレター、スターリングシルバーを示すライオンパサント、そしてロンドン レオパードヘッドです。 

George Maudsley JacksonはJosiah Williams & Co.の共同パートナーの一人であったことから、GMJはJosiah Williams & Co.と実質同体と考えてよいシルバースミスになります。
ホールマークのガイドブックである『JACKSON'S HALLMARKS』によれば、「GMJ」についてのコメントは「Wide range of particularly good flatware.」とありますので、GMJ単体の評価もかなり高いのですが、Josiah Williams & Co.も有名シルバースミスの一つです。

一般にヴィクトリア時代創業のシルバースミスが多い中にあって、Josiah Williams & Co.はジョージアンの時代に始まった老舗の一つになります。 1800年創業のJosiah Williams & Co.はブリストルのメーカーで、地方では最大のシルバースミスでした。 今日でも中世の街並みや大聖堂が美しいブリストルは、16世紀にはエイボン川河口の貿易港として栄え、その後はイングランド南西部の主要都市として発展しました。 しかし大きな都市であったがゆえに、第二次大戦中の1940年11月24日にはドイツ軍による空襲を受け、Josiah Williams & Co.も工房を失い、残念ながら140年の歴史に幕を閉じました。

それから、この品のデートレターをご覧いただくと、その形が盾状をしていて特徴があります。 ロンドン アセイオフィスにおける19世紀のほぼ第四四半期にあたる1877年から1895年までのデートレター サイクルは「盾」と覚えておかれると、アンティークハントの時には便利です。 この時代はイギリスの国力が大いに伸張した時期にあたることから、今日においてもこの頃のアンティークに出会う可能性も高いのです。 デートレターをすべて暗記することは難しくても、「ロンドンの盾はヴィクトリアン後期」と知っておく価値はあると思います。

この品が作られた当時の時代背景については、「英国アンティーク情報」欄の「14.Still Victorian」の解説記事を、そして英国のバターナイフの歴史については、「9.トラディショナル イングリッシュ バターナイフ」もご参考ください。

ヴィクトリアン スターリングシルバー バターナイフ




イギリス アンティーク 英吉利物屋 トップ(取り扱い一覧)へ 新着品物 一覧へ アンティーク情報記事 一覧へ 英吉利物屋ご紹介へ