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No. 15092 フランス製 シルバー クロス with フレンチ ホールマーク
クロス本体の縦長 3.8cm、留め具を含む縦長 4.1cm、横の長さ 2.3cm、クロス基盤の厚み 1mm弱、最大厚み 2.5mm、1900年前後のフランス製、一万二千六百円

フランス製のシルバークロスです。 クロスの四隅にデザインされたは上から時計回りに飛翔する鳥、マリアの立ち姿(ルルドの聖母と聖ベルナデッタ)、マリアの横顔、そして奇岩城のような修道院。 見所の多いアンティーク シルバーと思います。 クロスの上部にはフランス製シルバーの正式スタンダードを示す「蟹」マークと菱形のメーカーズマークが読み取れます。

このシルバー アンティークは、1900年を中心に前後15年ほどの間に作られたものと思います。 フランス製シルバーのスタンダードマークである「蟹」の刻印と「菱形」のフランス製メーカーズマークがクロス上部の丸い部分に刻印されています。 フランス流のホールマークには、デートレターの定めがないので、製作年を特定することは一般には困難ですが、この基準は1838年に制定されたフランスのルールであって、フレンチ アンティーク シルバーで、このオーソドックスな「蟹」&「菱形」刻印を持つ品は、かなり古いと見てよいでしょう。

イギリスで考えても、ブリティッシュ シルバーホールマークは、一般にシルバーウェア用であって、クロスやブレスレットなどアクセサリーで、ホールマークがあるものはむしろ少数派となります。 特に近年のアクセサリーとなりますと、「925」刻印はあっても、スターリングシルバーを示すライオンパサント他、ブリティッシュ ホールマークが完備しているアクセサリーはかなりの少数派になります。 その主たる理由は、アセイオフィスでブリティッシュ ホールマークを刻印してもらう為には、料金がかかる為です。 そのためにある程度の高級品でないと、ブリティッシュ ホールマークの刻印申請は行わないと考えらます。

フランスにおいても事情は似たようなもので、と言うか、フランスの方がシルバーホールマーク制度は弱いので、シルバーウェアでなく、シルバーアクセサリーで、「蟹」&「菱形」刻印を持つ品はフレンチアンティーク シルバー アクセサリーの中ではかなりの高級品と考えてよいでしょう。

裏面に見える文字ですが、装飾的な二重文字で「Lourdes」と彫ってあり、ルルドの聖母と聖ベルナデッタのお話で有名な聖地ルルドを示しています。 フレンチ シルバーのクロスですから、フランス人のお気に入り「ルルド」が彫ってあるのでしょうが、その背景をもう少し考えてみました。

私の住んでおりますイギリスから見ると、ルルドはまったくにカトリック旧教国であるフランスのローカルな観光地で、イギリス国教会が多数派となる人たちにとっては、ルルドのありがたみは、いまひとつピンと来ないところです。

ところが、カトリックのフランスにおいては、イエスキリスト信仰に加えて、聖母マリア信仰、そしてルルドの聖母と聖ベルナデッタあたりまでは、とても強い信仰対象になっているようで、ルルドの重みはローカルなものと言えません。 フランス全国レベルと言いましょうか、フランス国民レベルの信仰対象と言ってよさそうです。 そんな背景から、ルルドとあっても、それをもって、ルルドの品とは言い切れない面があるように見ています。

それから、フランスの銀製品はアクセサリーにせよ、スプーン等のシルバーウェアにせよ、イギリス製と比べて作りがいくぶん華奢に出来ている傾向があります。 ただ、写真のクロスは、フランスアンティークとしてはごく普通の品であり、一般論として申しますと重厚好みの英国風とはやや雰囲気が違うのですが、そこがいわゆるフランス風というわけで、フランス人好みがよく出ているアンティークと感じます。

英国風とフランス風については、以下の説明記事もご参考ください。
No. 14987 スターリングシルバー クリスティングスプーン with フラワーレリーフ
No.14988 フランス製 シルバー ティースプーン with ゴールドギルト & ライオン ランパント紋章

フレンチシルバーのホールマークはその小ささが特徴で、ちょっと見ただけでは分かり難いのですが、アンティークハント用のルーペがあれば、とても小さな手掛かりを読み取ることで、フランス製であることが解読できます。 この機会にフランスのホールマークについて少し解説しておきましょう。

1838年に導入されたフランス製シルバーのスタンダードマークにはいくつかの種類があります。 大きめな銀には知恵と武勇の女神、ミネルバの横顔マークを、そして比較的小さな銀には「いのししの頭」あるいは「蟹」のマークが刻印されます。 

ただ、問題は「いのししの頭」と「蟹」のマークの大きさが、1.25mm*1.75mmと小さいので判読が難しいことです。 まず、マークサイズが小さいので見落としがちになり、ホールマークからこの品はフレンチらしいと気付くのに時間がかかります。 そしてさらに、小さな刻印の中に描かれた図柄まで識別するには、刻印の表面をクリーニングする必要も出てきますし、やはりルーペの助けが必要にもなるのです。

それから、『私はキリスト教の信仰者ではありませんが、何故かクロスにとても惹かれます。』というお便りをいただきました。 

英吉利物屋ではアンティークのクロスを扱っておりますので、関心のある方から、そういうお話があるのは珍しいことではないかも知れません。 けれども、クロスに惹かれるという話はこれが初めてというわけでなく、多くの方からお聞きしてきましたし、私もそう感じることがあるので、なぜだろうかと考えたくなるのです。

英国アンティーク情報欄にあります「40. 何故かクロスにとても惹かれます。 その理由を英吉利物屋風に考えてみました。」をご覧いただければ幸いです。

イギリスは欧州における最大のアンティークマーケットであって、欧州各地からアンティークが集まります。 フランスものに限らず、旧オーストリア・ハンガリー帝国だとか、帝政ロシアに到るまで、専門家が多いのもロンドンアンティークマーケットの特徴です。
以下もご参考まで。
http://www.igirisumonya.com/wartski.htm

パリのクリニャンクールへ行くと感じますが、英仏でシルバーアンティークの市場規模を比べますと、銀に関してはイギリスの方が圧倒的に大きいようです。 フランス革命のような大きな動乱を経験し、さらには第二次大戦ではドイツによる占領をも経験したフランスと、革命もなければ戦争で負けたこともないイギリスの違いではないかと思います。 フランスのアンティークディーラーさんにとっても、銀器や銀のアクササリーについては、ロンドンに持ち込んだ方が有利になることもあるという事情を聞きました。

フランス製 シルバー クロス with フレンチ ホールマーク



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