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No. 15076 Peter & William Bateman ジョージ三世 スターリングシルバー オールドイングリッシュ パターン ブライトカット テーブルスプーン
長さ 21.8cm、重さ 60g、ボール部分の長さ 7.8cm、最大幅 4.6cm、ボールの深さ 1.0cm、柄の最大幅 2.0cm、柄の最大厚み 2.5mm、1807年 ロンドン、Peter & William Bateman作、SOLD

写真三番目に見えるように、裏面にはメーカーズマーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、ロンドン レオパードヘッド、1807年のデートレター、そしてジョージ三世の横顔マークが刻印されています。

メーカーズマークの刻印があまくて読み取りにくいのですが、その形状が四角形をしていて、ルーペでよく見るとPB,WBとあるようです。 1807年作とデートレターから判読できることからも、Peter & William Batemanの時代とよく符合することから考えて、このマークはPeter & William Batemanで間違いないでしょう。

今から二百年以上も前に作られたオールドイングリッシュ パターンのテーブルスプーンで、英吉利物屋の取り扱い品の中でも古い方の品になります。 二百年という年月というと、やはりその古さはアンティークとして大きな魅力になるでしょう。 ジョージアンの中でも1760年から1820年までのジョージ三世時代は長かったので、この時代のアンティークには「ジョージ三世...」と接頭辞のように国王の名前を冠することが多いのです。

彫刻は幾何学模様ではありますが、機械で切った彫刻線ではない手仕事なので、よく見るとブライトカットのジグザグが柄の中心線からずれていたり、あるいはブライトカットの幅に広い狭いがあったりして、人の温かみを感じさせます。 以前にブライトカットのスプーンをお買い上げいただいたお客様から以下のようなコメントをいただきましたが、二世紀前のシルバーウェアには、現代人を惹きつける何かがあるようにも思います。

『例のティースプーンは勉強の合間に入れるお茶に毎日欠かさず使っています。 不思議なもので、使っていると、以前より輝きが出てきたように思います。 また、親しみというか、スプーンに不思議な親近感までわいてきて、ちょっと危ないのかと思ってしまうほどです....(^^;』

ブライトカットは18世紀の終わり頃から、英国においてその最初の流行が始まりました。 ファセット(彫刻切面)に異なった角度をつけていくことによって、反射光が様々な方向に向かい、キラキラと光って見えることからブライトカットの呼び名があります。 この装飾的なブライトカット技術が初めて登場したのは1770年代でしたが、それは良質の鋼(はがね)が生産可能となってエングレービングツールの性能が向上したことによります。 この品は1807年の作なので、ブライトカットの装飾技法が使われ始めたうちでも、初めの頃の品になります。

英国でアンティークという言葉を厳密な意味で使うと、百年以上の時を経た品物を指します。 気に入った古いものを使っていくうちに、その品が自分の手元で‘アンティーク’になっていくことは、コレクターの喜びとも言えますが、この銀のスプーンが作られたのは1807年のことですので、余裕でアンティークのカテゴリーに入るどころか、その二倍の"ダブル"アンティークとなっているわけで、そんな辺りにもアンティーク ファンとしての楽しみ方がある品と言えましょう。

1790年にヘスター・ベイトマンが引退し、彼女の二人の息子達であったピーターとジョナサンによってファミリービジネスは引き継がれました。 ところが翌1791年にはジョナサンが亡くなってしまい、ジョナサンの奥方であったアンがご主人に代わり、ピーターとビジネスパートナーを組み、PB,AB(ピーター、アン ベイトマン)のマークで工房は引き継がれました。 アンの息子であるウィリアムが長じてPB,AB,WB(ピーター、アン、ウィリアム ベイトマン)の三人パートナー制でしばらくは工房の運営がなされましたが、1805年にはアンが引退して、このスプーンの刻印であるPB,WBの時代になったわけです。

数多いシルバーウェアの中でもベイトマン ファミリーの品は別格に扱われることが多いようです。 一つには二百年に近い年月を経ているということがあるでしょう。 しかしそれでも、なぜ?と思われる方も多いはずです。 手にとって直に見てみると、ボール部分が先細なタイプで品の良さを感じ、柄の曲線のなんとも言えない優雅さ、手仕事のみが生み出す温かさが多くの人を惹きつけてきた要因であることがわかります。

そうは言っても、ベイトマン以外のオールドイングリッシュ パターンの品とここがどうしても違うとは私は思わないのですが。 結局のところベイトマンがアンティークシルバーにおいて別格なのは、鶏が先か卵が先かの議論にもなりますが、コレクターの需要が強いからということになるのでは、と思います。

ベイトマン ファミリーの系譜については、 「19.ベイトマン ファミリーのメーカーズマーク」の解説記事もご参考ください。 また、オールドイングリッシュ パターンについては、「4.イングリッシュ スプーン パターン」を、そしてデュティーマークについては、「5.シルバーホールマークとジョージアンの国王たち」解説記事の後半もご覧ください。

Peter & William Bateman ジョージアン スターリングシルバー オールドイングリッシュ パターン ブライトカット テーブルスプーン




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