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No. 15063 スターリングシルバー デザートスプーン with ピアストワーク
長さ 15.2cm、重さ 32g、ボール部分最大幅 3.3cm、透かし柄の最大幅 1.95cm、柄の最大厚み 3mm弱、1914年 シェフィールド、一本 一万一千八百円 (2本あります。)

今から百年近く前、エドワーディアンの時代が終わってすぐの頃に作られた銀のスプーンになります。 この品が作られた1914年と言えば、第一次世界大戦が始まった年でもあります。 

銀が厚めで持ちはかりがあり、柄の最大厚みも3ミリ弱と、しっかり出来ています。 また、透かし部分の銀の厚みも最大で2ミリほどあり、全体として銀が厚くてがっしり系の銀スプーンに仕上げっています。

ボール部分の裏面にはメーカーズマーク、1914年のデートレター、スターリングシルバーを示すライオンパサント、そしてシェフィールド アセイオフィスの王冠マークが刻印されています。 デザインに特色があって、あまり見かけないタイプのシルバーウェアになりますが、全体として銀の質感からもたらされる重厚な雰囲気に特徴があるシルバー アンティークと思います。 

弾丸と的がデザインに組み込まれております。 柄元付近の流線や、透かし部分のクルッとしたデザイン、そして鏃先のようなデザインは、ケルティック モチーフを背景にしているように感じます。 また、的は同心円を描いておりますが、ケルティック スパイラルとの関連も考えられます。 

見所の多いデザインであるわけですが、このことは裏面にデザイン登録番号「Rd. 641819」が刻印されていることからも納得がいきます。 デザイン登録番号は、デザインを考案したシルバースミスが、パテントオフィスに申請して、このデザインの特許を取得したことを示しているわけで、シルバースミスが、まず自信を持って考案したデザインであることが、うかがい知れます。 

英国で「アンティーク」という言葉を厳密な意味で使うと、「百年以上の時を経た品」を指すことになります。 そんな訳で、英語で言うと「It will become an antique in four years. (この品はあと四年でアンティークになります。)」という言い方をされることがあります。 アンティークコレクターにとっては、やはり百年という年月の経過は大きなメルクマールになりますので、上記のような会話がなされる機会も多いのです。 

このシルバーウェアが作られたのは1914年ですから、正式なアンティークに昇格するまでにあとまだ四年が必要になる計算です。 しかし、気に入った古いものを使っていくうちに、その品が自分の手元で‘アンティーク’になっていくことは、コレクターの喜びとも言えますので、この銀スプーンには、そんな楽しみ方もあるかと思うのです。

写真の銀スプーンが使われていた当時のイギリスはどんな様子であったのか、アンティークの歴史的背景を知っていく上で参考になる、とてもよい映像資料を一つご紹介しておきましょう。 デイビット・スーシェ主演のポワロシリーズ『The Mysterious Affair at Styles (スタイルズ荘の怪事件)』です。 

原作は1920年に書かれており、時代設定は第一次世界大戦(1914年-1919年)の後半、舞台はイギリスの美しい田園地帯にある村と、そこにあるマナーハウス(領主館)となっております。 一般にポワロシリーズは1930年代のイギリスに時代設定しているのですが、この話は「名探偵ポワロ登場」とも言うべき記念の第一作であって、原作通りに1917年か18年頃のイギリスを描いています。

そうなると、他の作品群と違って1910年代のイギリスが見られるのが著しい特徴です。 戦争のために祖国を離れて疎開してきている外国人たちの様子は、当時のイギリス社会の状況を映しております。 また、登場するクラシックカーを見るだけでも価値ありと言うイギリス人の友人もおります。 確かに1910年代のクラシックカーは、30年代と比べると一段とアンティークです。 クラシックカーのみならず、乗り合いバスや病院馬車なども登場して趣向が凝っています。 

また、マナーハウスの庭でのアフターヌーンティーの様子は楽しいですし、まだ電灯が普及していなかった時代ですので、ランプとロウソクというアンティークな暮らしの描かれ方にも興味を惹かれます。 ロウソク燭台やオイルランプ、夕方になって薄暗くなってもランプを付けない当時の暮らし、ディナーテーブルの様子、夜間も電灯はないのでロウソクを持ち歩いたり、ランプに灯を入れたりします。 時代考証のしっかりした映像作品を見ることは、アンティークの勉強に役立ちます。

デイビット・スーシェのポワロシリーズは短編と長編を含めて七十作ほどあって、全部見るのは大変ですが、その中でもキーになるいくつかの作品があるように思います。 私のお薦めベストテンの一つとして、『The Mysterious Affair at Styles (スタイルズ荘の怪事件)』を推したいと思います。

スターリングシルバー デザートスプーン with ピアストワーク




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