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No. 15050 バタースペード タイプ ヴィクトリアン スターリングシルバー バターナイフ
長さ 13.9cm、重さ 22g、ブレードの最大幅 2.1cm、柄の最大幅 1.1cm、柄の最大厚み 2.5mm、1892年 シェフィールド、Atkin Brothers Silversmith Ltd.作、一万五千円

柄の両面にわたるレリーフ デザインにはゴージャスな印象を受けますが、このヴィクトリアン アンティークの魅力は、広めなブレード部分に施された手彫りのエングレービングの見事さに集約されていると思います。

フラワーパターンと植物の枝葉に見られる基本デザインは深めな彫りで、ブライトカット様の光の反射が綺麗です。 細部に目を向けていくと、ジグザグ状のかぎ彫りも美しいと思います。 さらには、微細な彫刻線で影を付けていく彫刻には、手仕事としては限界的なヴィクトリアンの巧を感じます。 写真では解像力不足でよくご覧いただけないのが残念ですが、マグニファイイング グラスで鑑賞いただくと当時の限界的な手仕事のレベルの高さに驚かれると思います。

バターナイフは元々バタースペードという鏝状(こて状)のシルバーウェアから発展してきた経緯があります。 このバターナイフはブレード面に対して柄先が高い位置にくる構造で、その昔の「こて状バタースペード」の面影を残しております。 

百年以上前のアンティークであると同時に、バターナイフの歴史的発展過程を示しているわけで、その意味で博物館的な興味をも感じさせてくれるヴィクトリアーナと言えましょう。 バターナイフの歴史については、「9.トラディショナル イングリッシュ バターナイフ」の解説記事をご参考ください。

シルバースミスは一流どころのAtkin Brothers Silversmith Ltd.になります。 写真三番目で見えるように、ブレード裏面には四つのブリティッシュ ホールマークがしっかり深く刻印されているのも、この品のよい特徴になっています。 ホールマークは順にAtkin Brothers Silversmith Ltd.のメーカーズマーク、1892年のデートレター、スターリングシルバーを示すライオンパサント、そしてシェフィールド アセイオフィスの王冠マークです。

英国の多くのシルバースミスはヴィクトリア期の19世紀後半創業という会社が多いのですが、このバターナイフを作ったAtkin Brothers Ltd.はその創業が1750年という老舗です。 

また第一次大戦を経て英国の勢いがピークを過ぎるとともに消えていったシルバースミスが多い中にあって、Atkin Brothers Ltdの勢いは衰えませんでした。 1930年代にはこの会社は当代一流の職人を抱える会社として名を馳せていました。 

1938年の英国産業展覧会ではAtkin Brothersご自慢の職人、親方衆がクイーンメアリーに謁見を許されお褒めの言葉を授かったとの記録が残っています。 親方衆の中には、Atkin Brothers勤続63年のハリーデニスや勤続62年のジョンストークスが含まれていました。 そして当時31人いた親方衆の平均勤続年数は47年4ヶ月だったそうです。 こうした親方たちの手仕事に支えられたシルバーウェアのクォーリティは相当高かったと考えられます。

徒弟制度の善し悪しは別として、当時のAtkin Brothersのような職人集団は、今日の世の中では望むべくもありません。 あるシルバースミスの方からお話を伺ったのですが、人件費の高騰した今日のイギリスにあっては、昔のシルバースミスと同じ仕事は到底出来ないとおっしゃっていました。

この品が作られたヴィクトリア時代の背景については英国アンティーク情報欄にあります「14.Still Victorian」や「31. 『Punch:1873年2月22日号』 ヴィクトリアンの英国を伝える週刊新聞」の解説記事もご参考ください。

バタースペード タイプ ヴィクトリアン スターリングシルバー バターナイフ





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