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No.14988 フランス製 シルバー ティースプーン with ゴールドギルト & ライオン ランパント 紋章
長さ 14.1cm、重さ 14g、最大幅 2.9cm、柄の最大幅 1.75cm、19世紀終り頃のフランス製、一本 四千八百円 (6本あります-->5本あります-->4本あります-->2本あります)

フレンチ シルバーのスプーンで、柄先に見える王冠をかぶった立ち姿ライオンの紋章が印象的です。 全体がゴールドギルトされているのは、いかにもフレンチなデコレーションと感じます。 ティースプーンとしては大きめサイズなので、ティーやデザート用以外にも、普段使いの一本として万能サイズの銀スプーンとなりましょう。

このタイプのフォルムをしたティースプーンはイギリスにもあるのですが、ゴールドギルトが施されているスプーンはまず見ません。 ところがフランスのアンティークでは、時々見かけます。 百年ほど前のイギリスとフランスで、シルバースミスの銀装飾手法の違い、あるいはその背景にある英仏人の好みの違いが見えてきて興味を覚えます。

さらに言えば、同じ長さのイギリス製と比べると、持ちはかりがやや少なめで持った感じに華奢な印象もありますが、これもフランス アンティークではよくあることで、その点でもいかにもフレンチなシルバーウェアと言えましょう。

ライオンの歩行姿マークが「ライオンパサント(Lion Passant)」であるのに対して、ライオンが後ろ足で立ち上がった姿は、「ライオン ランパント(Lion Rampant)」と呼ばれます。 柄先に見えるのは手彫りのライオンランパントの紋章で、彫刻は精巧な仕上がりなので、手元にルーペがあれば、アンティークを手にする楽しみが増えると思います。

それから、ライオン ランパントの下には縞が入った棒状の台座がありますが、これはリースと呼ばれ、英仏に限らずヨーロッパでは中世以来の伝統を持つ紋章文化に共通した特徴も備えております。

ボール内側の柄元に近い左右には、フレンチホールマークが深く刻印されているのも、この品のよい特徴です。 二つのホールマークは、フランス製シルバーのスタンダードマークである知恵と武勇の女神ミネルバの横顔マークと、菱形のメーカーズマークになります。 

1838年に制定されたフランスのホールマーク制度によれば、ミネルバマークと四角いメーカーズマークがフレンチシルバーの要件になっています。

このスプーンのデザインについてその系譜を辿ってみますと、19世紀半ばのロココリバイバルの中で生まれ、フィドルパターンをよりデコラティブにした派生形と言われます。 同タイプのイギリス品はプリンス・アルバートとクイーン・ヴィクトリアの結婚で賑わった1840年代に初めて登場したもので、『Albert with Leaf scroll heel』と呼ばれるタイプになります。  普通のフィドルパターンよりも、柄のフィドルがより女性的で流麗なフォルムになって、クルッとした葉っぱの装飾が柄先に付いていることをメルクマールとしています。

せっかくですので、この機会に紋章の基礎知識について少しお話しておきましょう。 紋章はコート オブ アームズと言うのが一般には正式です。 クレストという言葉もありますが、クレストとは紋章の天辺にある飾りを言います。 紋章の各部分の名称として、例えば英国王室の紋章の両サイドにいるライオンとユニコーンの部分をサポーターと言い、中央の盾状部分をシールドまたはエスカッシャンと言います。 さらに細かく言うと、写真のティースプーンに刻まれた紋章ではライオン ランパントの足元に棒状の飾りが見えますが、これはクレストの台座であって、リースと呼ばれます。

英国王室の紋章については、以下もご参考まで。
http://www.igirisumonya.com/14864.htm

ただし、紋章のすべてを描いて使うのは、大掛かり過ぎるので、その一部をもって紋章とされることも多く、中紋章とか大紋章という言い方もあります。 しかし、その区別は厳密でないので、紋章の一部をもってコートオブアームズという言い方をしても差し支えありません。

ちなみに、このコート オブ アームズの体系化や研究について、中世ヨーロッパにおいては、多くの国々に紋章を管理する国家機関がありました。 今ではなくなっているのが普通ですが、面白いことにイギリスでは紋章院というのがまだ活動を続けています。 イギリスの紋章学(Heraldry)は九百年ほどの歴史を持っており、大学以上の高等教育で学ぶ歴史学の一分野となっています。 

そんなわけで、紋章学や紋章院の働きについて書かれた 『HERALDRY IN ENGLAND』(Anthony Wagner著、Penguin Books、1946年刊)というようなアンティークな専門書も手に入ります。 図解入りで見ていて楽しい本なのでご紹介しておきましょう。 (写真四番目&五番目)

フィドルパターンと言うのは、スプーンの柄の形がヴァイオリン(Fiddle)に似ていることから、付けられたスプーンタイプの名前です。 もともとは18世紀のフランスで人気だったフィドルパターンでしたが、19世紀に入った頃からイギリスでも次第に流行っていきました。 フィドル パターンについてはアンティーク情報欄「4.イングリッシュ スプーン パターン」の解説記事もご参考ください。

それから、スプーン裏面の様子が写真三番目にありますので、ご覧になってください。

フランス製 シルバー ティースプーン with ゴールドギルト & ライオンランパント紋章



裏面の様子






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