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No. 14907 アンカー &船舵 スペイン コイン ピアストワーク ペンダントヘッド SOLD
直径 2.0cm、留め具を含む縦の長さ 2.85cm、厚み 2mm弱、SOLD

「ESPANA」とありますので、スペインのコインにアンカーと船舵がピアストワークで抜かれています。 2ミリ弱と厚みのあるコインに、手仕事で糸鋸を引いた作品でたいへんな時間をかけて作られたものです。 比較的近年の品と思いますが、その労力を多としたいと思います。 アンカーに絡まるロープの部分など、よくぞここまで精緻な透かし細工を完璧にやりあげたものだと感心します。

世界史を紐解けば、スペインとポルトガルは世界の海へと大規模に乗り出していった初めての国々であって、アンカーや船舵にはとりわけノスタルジーを感じる人々なのだろうと思います。 スペインやポルトガルに旅行に行きますと、のんびりした雰囲気が心地よくて、昔の勇壮さはあまり感じられないのは歴史の面白さでしょう。

それどころか、この二カ国はギリシャと並んでユーロ圏のお荷物扱いを受けているこの頃であります。 ところが、大航海時代のスペインとポルトガルは飛ぶ鳥を落とす勢いでありました。 

十五世紀終り頃のトルデシリャス条約では、大西洋上に線を引いて、ここから西はスペインの勢力範囲、ここから東はポルトガルの勢力範囲と、両国で勝手に地球分割を行って、いい気なものでありました。 1529年のサラゴサ条約では、今度は太平洋上に線を引きました。 ちなみに、ポルトガル人が種子島にやって来て鉄砲を伝えたり、その後は南蛮貿易が振興したのは、サラゴサ条約で日本はポルトガルの担当領域に入っていたからです。

モチーフとしてのアンカーにはかなり古い歴史があります。 世界史で習ったローマ時代のカタコンベには、クロスに見立てたアンカーがありました。 当時はキリスト教が国教となる以前のことで、アンカーをクロスの代用とすることで信仰を守る必要があった時代でした。

そうした背景があって、アンカーは初期のクリスチャンモチーフとなりました。 そしてアンカーのクロス的側面を重視する場合には、アンカーのことを「聖クレメントのクロス」とか、「マリナーズ(船乗りの)クロス」と呼びます。 さらに時代が下って、ヴィクトリアン後期からエドワーディアンの頃になると、イギリスではシーサイドリゾートが人気となり、マリンモチーフのファッション性が好まれました。 

クリスチャンモチーフとしてのアンカーには、クロスの代用という意味合いの他にも、「Hope(希望)」や「Steadfastness(しっかりしていること)」を表象する意味合いも含まれています。 あるいはまた、船が抜錨して次の目的地に向かうという連想から、「Fresh Start(新たな出発)」をシンボライズするモチーフともなっています。

船舵のホイールはTime(時の経過)、Fortune(運勢、幸運、財産)、Sun(太陽)等をシンボライズするデザインです。 また、クリスチャンモチーフとしての意味合いにおいては、St.キャサリンを表象するデザインとされます。 そうした中で特に中世の昔にあってはFortuneの意味合いが重視されていました。 パリのノートルダム寺院やアミアン大聖堂のゴシック建築に見られる中世の円形窓は、Wheel of Fortuneを表現していると言われます。

時をくだって、船舵のデザインはマリンモチーフが流行った頃の影響が出ているとも考えられます。 19世紀の終わり頃には欧州各国で海浜リゾートが賑わって、ロープや船の舵、波、シーガル、ヨットといったマリンモチーフが人気となったのです。 そしてマリンモチーフの中でも船舵デザインは、未知の海原に途を切り拓いていくポジティブイメージを示すデザインとして好まれたものです。

アンカー &船舵 スペイン コイン ピアストワーク ペンダントヘッド

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