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No. 14845 ヴィクトリアン スターリングシルバー バターナイフ with フラワーエングレービング
長さ 18.3cm、重さ 38g、ブレード最大幅 2.7cm、柄の最大幅 1.7cm、柄の最大厚み 3.5mm、1892年 ロンドン、John Aldwinckle & Thomas Slater(=Holland, Aldwinckle & Slater)作、二万三千円

今から百二十年近く前の1892年に作られた銀のバターナイフで、ヴィクトリアン アンティークになります。 このシルバーウェアが作られた当時はと言えば、日本史年表を見てみると、1890年に第一回帝国議会、1894年日清戦争などあります。 ずいぶんと昔のアンティークであることが、あらためてお分かりいただけると思います。  

18.3センチもの長さに、ブレード幅が最大で3センチほどあって、現代のバターナイフと比べるとかなりのキングサイズであることから、バターナイフと言われても今日的にはちょっとピンと来ないかも知れません。 しかし、これがアンティークでしか感じることが出来ない昔のシルバーウェアの味わいとなっております。 

ブレード部分には手彫りのフラワーエングレービングが美しく、こうした小花の彫刻は柄先に向かっても施されており、ゴージャスな仕上がりとなっています。 銀製品として綺麗なだけでなく、手にしてみると 38グラムという銀の重さが心地よいところは、いかにも英国風なアンティークシルバーであって、お薦めできるヴィクトリアーナと感じます。

クイーン ヴィクトリアが若干18歳の若さで英国王位を継承したのは1837年のことで、この年から1900年までの64年間がヴィクトリア時代にあたります。 ヴィクトリア女王は在位期間が長かったことと、その時代は英国の国力が格段に伸張した時期と重なっていた為に、イギリス史の中でも特にポピュラーな国王となりました。 アンティークの分野にあっても、この時代の物品を指すヴィクトリアーナ(Victoriana)という用語もあって、ヴィクトリア時代を専門とするコレクタターが大勢いるわけなのです。

写真四番目に見えるように、柄の裏面にはブリティッシュ ホールマークが深くはっきりと刻印されているのも、アンティークとしてこの品のよい特徴になっています。 ホールマークは順にJohn Aldwinckle & Thomas Slaterのメーカーズマーク、ロンドン レオパードヘッド、スターリングシルバーを示すライオンパサント、そして1892年のデートレターです。

シルバースミスの「Holland, Aldwinckle & Slater」は、英国シルバーウェアの歴史の中でも大きな役割を果たしてきた有力メーカーの一つです。 イギリスのアンティーク シルバーウェアに関する参考書を紐解きますと、ヴィクトリア期の重要シルバースミスとして、ジョージ・アダムスとフランシス・ヒギンスが挙げられることが多いようです。 この二大メーカーを繋ぐ役割を担ったのが「Holland, Aldwinckle & Slater」でありました。 

「Holland, Aldwinckle & Slater」はヴィクトリア時代が始まった翌年の1838年に、ヘンリー・ホランドがロンドンで創業した銀工房です。 1866年にはElizabeth Eaton & Sonを買い取って、事業規模を拡大していきます。 1883年には新たに二人のパートナーが加わり、工房名は「Holland, Aldwinckle & Slater」と変わりました。 その後もいくつかのシルバースミスを買収し、ヴィクトリア期を通じて有力なシルバースミスに成長していきましたが、1883年にこの時代の最有力シルバースミスであったジョージ・アダムスのChawner & Coを買収したことは大きな出来事となりました。 Chawner & Coから移ってきた腕の確かな銀職人たちは「Holland, Aldwinckle & Slater」の名声を高めることとなったのです。

その後の工房史も見ておきますと、エドワーディアンの時代以降まで優秀な銀職人が集まる一流メーカーとして活躍しましたが、1922年にはフランシス・ヒギンスに買収されることになって、その歴史を終えました。 ヴィクトリアンとエドワーディアンの時代を通して、英国シルバーウェア史の中心に常に位置してきた「Holland, Aldwinckle & Slater」は、当時の一流メーカーの一つと言ってよいでしょう。

それから、この品のデートレターをご覧いただくと、その形が盾状をしていて特徴があります。 ロンドンアセイオフィスにおける19世紀のほぼ第四四半期にあたる1877年から1895年までのデートレター サイクルは「盾」と覚えておかれると、アンティークハントの時には便利です。 この時代はイギリスの国力が大いに伸張した時期にあたることから、今日においてもこの頃のアンティークに出会う可能性も高いのです。 デートレターをすべて暗記することは難しくても、「ロンドンの盾はヴィクトリアン後期」と知っておく価値はあるでしょう。

この品が作られた当時の時代背景については、「英国アンティーク情報」欄にあります「31. 『Punch:1873年2月22日号』 ヴィクトリアンの英国を伝える週刊新聞」と「14. Still Victorian」の解説記事もご参考ください。

ヴィクトリアン スターリングシルバー バターナイフ with フラワーエングレービング






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