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No. 14842 ヴィクトリアン スターリングシルバー バターナイフ
with ピアストワーク
長さ 19.0cm、重さ 43g、ブレード最大幅 2.8cm、透かし柄の最大幅
1.85cm、最大厚み 4mm、1856年 ロンドン、二万七千円
このバターナイフが作られたのは今から150年以上の前のヴィクトリアン中期にあたる1856年です。 柄にはピアストワークが施されています。 この透かし細工をルーペで詳細に見てみると、断面には糸鋸を引いたギザギザ跡が残っていて、時間のかかった手仕事であることが分かります。 大きくてしっかりした雰囲気の品で、柄元のデザインや透かし柄の様子からもヴィクトリアン中期の時代の勢いを感じさせてくれるところは好感が持てます。
英国でアンティークという言葉を厳密な意味で使うと、百年以上の時を経た品物を指し、この品が作られたのは19世紀半ばですから、余裕でアンティークのカテゴリーに入ります。 アンティークにもいろいろありますが、やはり百五十年という古さは大きな魅力となりましょう。
この品が作られた頃の日本史年表を眺めてみると、三年前の1853年には黒船来航で、『太平の眠りを覚ます上喜撰(蒸気船)、たった四杯(四艘)で夜も眠れず』の狂歌が流行っています。 四年後の1860年には、安政の大獄で引き締めを図った幕府の大老・井伊直弼が江戸城桜田門外の変で暗殺され、以降は幕府の権威も地に落ちて、明治維新への流れが決まっていく激動の時代でありました。 そう考えてみると、このアンティークがいかに古い品であるかお分かりいただけると思います。
英国のシルバーウェアではピアストワークの品を時々見かけますが、その制作年代を見てみると1920年代以降の作であることが多いようです。 この品はヴィクトリアン中期の透かしデザインということで、透かし物の走りとも考えられ、アンティークとしてはレアものの範疇に入るかと思います。 また、そもそもバターナイフの歴史はそれほど古くないので、1856年作のこの品はバターナイフとしても初期のアンティークと考えられます。
ブレード裏面には、ロンドンレオパードヘッド、1856年のデートレター、スターリングシルバーを示すライオンパサント、ヴィクトリア女王の横顔でデューティーマークがしっかり刻印されていますが、メーカーズマークはあまくなっていて、判読が困難です。
このバターナイフが作られたヴィクトリア時代の様子については、「英国アンティーク情報」欄にあります「14.Still Victorian」の解説記事もご参考ください。 また、バターナイフの歴史について詳しくは、「9.トラディショナル イングリッシュ バターナイフ」の解説記事をご覧ください。
アンティークシルバーをお探しの、『不思議の国のアリス』ファンの方から、アリスにちなんで1856年(二人の出会い)か
1862年(黄金の昼下がり)頃のアンティークはないでしょうかと、お問い合わせいただいたことがあります。 アンティーク収集にはいろいろな方法があると思いますが、こういう切り口も面白いと興味深く感じましたので、皆様にもご紹介させていただきましょう。
『不思議の国のアリス』の魅力は、ジョン・テニエルの挿絵によるところも大きいと思うのですが、そのあたりの事情は以下もご参考まで。
「31. 『Punch:1873年2月22日号』 ヴィクトリアンの英国を伝える週刊新聞」
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