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No. 14799 エドワーディアン スターリングシルバー ジャムスプーン
長さ 13.3cm、重さ 18g、最大横幅 3.3cm、柄の最大幅 1.35cm、柄の最大厚み 3mm、1905年 バーミンガム、一万九千円

今から百年以上前のエドワーディアンの時代に作られたスターリングシルバーのジャムスプーンです。 ボールに見える彫刻部分とプレーン部分の境目には、ブライトカット様の彫りで境界ラインが装飾されていて、ねじれ柄の輝きとともに、光の反射が綺麗です。

繊細なハンドエングレービングのデザインは植物模様とウェーブパターン(波模様)の融合です。 波模様モチーフにはContinuation(続いていくこと)や Eternity(永遠)という意味合いが象徴されており、ヴィクトリアンからエドワーディアンの頃に好まれたクリスチャンモチーフになります。

波模様の背景部分には、色合いが濃いめになっていて影がかかったように見えますが、このシェードはとても細やかな手彫りの彫刻を縦横に巡らせて影をつけたもので、ルーペで見ていただくと当時の限界的な手仕事の素晴らしさも納得いただけると思います。 そして、柄元に向かうねじれ柄は装飾的な美しさを追求するとともに、スプーンの強度をアップするのにも役立っている装飾構造です。

写真三番目に見えるように、柄の裏面には四つのブリティッシュ ホールマークがしっかり深く刻印されています。 ホールマークは順にメーカーズマーク、バーミンガム アセイオフィスのアンカーマーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、そして1905年のデートレターになります。

1905年といえば五月には日本海海戦があって、そして日露戦争が終った年にあたり、このころ夏目漱石は『我輩は猫である』を『ホトトギス』に連載中で、翌年には『坊っちゃん』や『草枕』が発表された時代と思えば、ずいぶん昔であることが実感できます。 

世界史のビックイベントとしても、バルト海、北海、大西洋、喜望峰を経て日本へ向かうロシアのバルチック艦隊の動きが注視され、当時のイギリスでは日本海海戦の行方が大変な興味を持って見守られていたとの記録が残っております。

このジャムスプーンが作られた前年の秋からロシアのバルチック艦隊は日本へ向けて航行中でした。 そして1904年10月にはイギリス沖合いの漁場ドッガーバンクで、漁船を日本の水雷艇と誤認したバルチック艦隊が、英国漁船砲撃事件を引き起こして、英国世論が激高する事態となっています。 

日本に向かって戦争に行くロシア艦隊が、途中で英国漁船を何百発もの砲弾で打ち払って、間違いと分かった後には救助もせずに通り過ぎてしまったのですから、誰だって怒るだろうと思います。 

当時の日本とイギリスは日英同盟を結んでおりましたが、ドッガーバンク事件を契機にイギリス世論もおおいに日本に味方しました。 そしてイギリス政府によるバルチック艦隊の航海妨害などナイスアシストもあって、日本海海戦に向けて有利な展開となったのは幸いでした。 世界が固唾を呑んで1905年5月の海戦の行方を見守っていた、このアンティークはそんな時代の品なのです。

エドワーディアン スターリングシルバー ジャムスプーン



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