アンティーク 英吉利物屋 トップ(取り扱い一覧)へ 新着品物 一覧へ アンティーク情報記事 一覧へ 英吉利物屋ご紹介へ

No. 14761 エドワーディアン スターリングシルバー ケース SOLD
縦の長さ 8.8cm、横の長さ 6.5cm、最大厚み 1.4cm、重さ 69g、1910年 バーミンガム アセイオフィス、John Culver Ltd作、SOLD

内側のゴールドギルト部分をお手入れしたところ、綺麗になりましたので、写真を撮り直してみました。

シルバーケースとしては標準サイズになろうかと思います。 作られたのは今からほぼ百年前の1910年で、エドワーディアンの時代がちょうど終わった年になりますが、デザイン上の区分としてはエドワーディアン アンティークといって差し支えないでしょう。 

彫刻のモチーフは渦巻きと波模様の融合デザインです。 波模様モチーフには、Continuation(続いていくこと)や Eternity(永遠)という意味合いが象徴されており、ヴィクトリアンからエドワーディアンの頃に好まれたクリスチャンモチーフのデザインになります。

「Spiral=渦巻き、螺旋」というのは、とても重要なケルティックモチーフで、渦巻きは太陽を象徴し、そこからGrowth(成長)、Expansion(拡大)、Energy(活力)の意味合いが導かれます。 イギリスにおけるケルティック リバイバルの潮流の中で渦巻き様のウェーブパターンが流行っていった経緯があります。

写真一番目で左上の扇形部分は、半径4センチ弱の四半円であって、エングレービング以外の面積も広いので、ちょっとした鏡としてもお使いいただけます。 ただし、このシルバーケースは表と裏ともに平らな銀板ではなくて、緩やかな曲面構造をなしておりますので、平らな鏡ではないのですが、代用としてなら役立ってくれるでしょう。

蓋を開けると内側には写真三番目のように、ゴールドギルトが施されています。

写真三番目で見て内側左サイドには四つのブリティッシュ ホールマークがしっかり深く刻印されています。 ホールマークは順に「John Culver Ltd」のメーカーズマーク、バーミンガム アセイオフィスのアンカーマーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、そして1910年のデートレターになります。 内側右サイドにもスターリングシルバーを示すライオンパサントと、1910年のデートレター刻印があります。 

シルバースミスの「John Culver Ltd」は、ヴィクトリア時代にロンドンのクラーケンウェルで創業した銀工房です。 ゴールド ウォッチチェーンやジュエリーも作っていたメーカーでありました。 イギリスの銀工房を大きく二つに分けるとすれば、スプーンやフォークといったシルバーウェアの銀工房と、アクセサリーやジュエリーの銀工房に分けられるでしょう。 もちろん大きな工房になれば、どちらも扱ったわけですが、工房の歴史や起源をたどれば、シルバーウェア系とジュエリー系に大別できると考えられます。

「John Culver Ltd」は、ウォッチチェーン、ジュエリー、そして写真に見られるようなシルバーケースを作っていたわけで、ジュエリー系になりましょう。 そのことは工房または店舗があったロンドンのクラーケンウェルという場所からも、ジュエリー系であったろうと推定できます。 クラーケンウェルはロンドンの中でも金融街シティーに近い方で、ロンドンのターミナル駅で言えば、キングスクロス駅からリバプール・ストリート駅へ向かう中ほどにあります。 ウォッチチェーンやシルバーケースなど扱う「John Culver Ltd」は、金融街シティーに近いところに店舗を構えた方が、なにかと都合がよかったろうと考えられます。

ちなみに、以下にありますギルドホールの立派な建物は、クラーケンウェルから数百メートルのところで、歩いて行ける範囲にあります。
http://www.igirisumonya.com/clockmuseum.htm

このアンティークの楽しみ方として、ロンドンにお越しの際には 「John Culver Ltd」のあったクラーケンウェルから、ギルドホール、そしてクロックメーカーズ ミュージアム辺りを散策されたら、アンティークへの興味がもっと深まり、より楽しめるだろうと思います。

英国でアンティークという言葉を厳密な意味で使うと、百年以上の時を経た品物を指します、そして百年もので素晴らしいアンティークはそうはないものです。 この品はもうすぐ‘アンティーク’になろうという古さで、時の流れを感じさせてくれますし、と同時にコンディションの良さもポイントになっています。 気に入った古いものを使っていくうちに、自分の手元で‘アンティーク’になっていくことはコレクターの喜びとも言え、このシルバーケースにはそんな楽しみ方もあると思うのです。

一言で百年といっても、やはりそれだけの時の経過は大変なことと思います。 ちなみにこの頃の歴史年表を眺めてみますと、写真の品が作られた頃の出来事として、1910年:エジソンが電球を発明とか、1912年:タイタニック号氷山に衝突して沈没などがあり、ずいぶん昔のことなのです。

このアンティークが作られた時代というのは、日本で言えば明治の終り頃、オイルランプよくてガス灯の時代で、電灯はまだありませんでした。 夏目漱石 『三四郎、それから、門』の三部作が二年の連載を経て完結したのが、このシルバーケースが作られた年なので、アンティークを手にしながら、その昔の時代に思いを馳せる読み物としてお薦めしたいと思います。

いつも英吉利物屋をご贔屓いただいているお客様から、アンティーク シルバーケースの使い方について情報をいただきました。 普段私が言っている薬入れや裁縫セット入れといった使い方とはまた違ったアンティーク活用法で興味深いので、皆様にもご紹介させていただきましょう。

『最近、アンティークのシガーケースの自分なりの使い方として、タバコの変わりに板ガムを入れてみました。丈夫に出来ていて、ズボンのポケットにもスッポリ入ります。友達にも自慢(?)してみようと思います。 T.K. 』

T.K.様、情報提供ありがとうございました。 お客様との情報交換を通じて、英国アンティークへの理解をお互いに深めていけたら嬉しく思います。
エドワーディアン スターリングシルバー ケース

裏面の様子




アンティーク 英吉利物屋 トップ(取り扱い一覧)へ 新着品物 一覧へ アンティーク情報記事 一覧へ 英吉利物屋ご紹介へ